1.アビクリアAviClear
アビクリア(AviClear)とは?
米国キュテラ社が開発した、皮脂腺に作用する1726nmの波長を用いた世界初の米国FDA認可ニキビ専用レーザー治療機器です。皮脂の過剰分泌を抑えることで、中等度〜重度のニキビを根本から改善し、再発しにくい肌へ導きます。1ヶ月間隔で3回の治療が基本で、ダウンタイムはほとんどありません。日本では2025年から導入が始まり、難治性ニキビに対する新しい選択肢として注目されています。

アビクリア(AviClear)の主な特徴
- 根本的なニキビ治療: ニキビの原因となる皮脂腺に選択的に作用するため、難治性ニキビに優れた効果を発揮する
- 副次的な効果: 皮脂分泌が抑制されるため、脂性肌(テカリ肌)にも効果的(毛穴の詰まりが解消され、開いた毛穴が目立ちにくくなる報告もある)
- 1726nmの波長: 皮脂腺のみに吸収される波長をあてることで、周囲組織へのダメージを最小限に抑える
- 治療スケジュール: 原則として約1ヶ月間隔で3回で終了
- 効果: 即効性はないが、長期的には優れた効果を示す。イソトレチノインは内服終了直後がピークだが、アビクリアは終了してから1年以上経過してからピークに達し、持続性に優れている
- 治療成績: 中等度~重度ニキビが1年後にほぼ消失/完全消失した割合が約7割と報告されている(全体の1割が効果不十分)。
- ダウンタイム: 冷却機能(AviCool™)により、痛みや熱さを抑え、直後のメイクも可能。ダウンタイムはほとんどない
- 副作用: 赤み、腫れ、パージング(一時的なニキビの悪化)がみられることがあるが、一時的なもので通常は自然に改善する
なぜアビクリア(AviClear)なのか?
今まではイソトレチノインが難治性ニキビ治療の第一選択でした。しかし、現在はアビクリアがイソトレチノインと「双璧」をなす強力な選択肢となりました。イソトレチノインは即効性があるものの、再発率が約3割というのが難点です。
当院では再発率を下げるために様々な対策を講じていますがゼロにはできません。再発した患者さんにイソトレチノインを継続投与しても、その後も再発・再燃を繰り返す傾向が強く、そのような経緯からアビクリアの導入が必要と考えた次第です(2026年3月現在アビクリアの導入施設は日本全国で20施設ほどしかありません)。アビクリアには即効性はありませんが、持続性に優れています。わずか3回で治療は終了します(3回で終わるので遠方の方にもお勧めできます)。また経口イソトレチノインにみられるような懸念事項や副作用に悩まされることもありません。
従来の保険治療ではニキビは必ず再発します。当院ではアビクリアを最終手段(重症例や難治例に限定する)という考えではなく、軽度~中等度ニキビであっても早期治療の選択肢の1つとしてお勧めしています。理由は以下の4点です。
- ニキビがあることで仕事や学業に支障をきたし、社会的損失の大きさが指摘されている
- 保険治療で何年もニキビの再発に悩まされるくらいなら、多少の費用がかかっても完治を目指した治療をした方が良い
- 長年ニキビが続くと瘢痕が形成されることがあり、瘢痕の治療は非常に難しく、費用も時間もかかる。アビクリアの早期導入により瘢痕を予防することができる
- アビクリアは米国FDAおよび日本でも認可されたエビデンスのある治療機器であり、有効性・安全性ともに確立されている(J Am Acad Dermatol誌2026年2月掲載)
新生ニキビを繰り返す状態では新たにニキビ跡や赤みが生じる可能性があり、永久に肌がきれいにならない悪循環が続いてしまいます。アビクリアで完治を目指しましょう。保険適用がないため費用はかかりますが、それだけの価値は十分あります。
アビクリア(AviClear)の治療成績
- 7施設共同 年齢16歳以上 104例
- 重症度基準:軽度~重度(顔面における炎症性皮疹15個以上)
- 中等度~重度: 99%
- 単独治療(併用治療なし)/1か月間間隔で3回施術実施
<主要評価項目>炎症性丘疹の減少率
治療3カ月後 50%以上改善した割合は80%
治療6カ月後 50%以上改善した割合は87%
治療12カ月後 50%以上改善した割合は92%
<副次評価項目>IGAスコア評価
治療3カ月後 2段階以上改善した割合は46%
治療6カ月後 2段階以上改善した割合は52%
治療12カ月後 2段階以上改善した割合は79%
中等度~重度ニキビが1年後に完全消失またはほとんど消失した症例が約7割だったことが報告されました。しかし全体の1割の症例で効果不十分でした(文献1)。6ヶ月後の治療成績はイソトレチノインに軍配があがりますが、長期的にはアビクリアが優位性を示す可能性があります。現在はより効果的な照射方法が提唱されており、アビクリアの治療成績は今後さらに向上すると考えられます。
(文献1)Goldberg D et al. Safe and effective acne treatment across skin types with a 1726 nm sebum-selective laser: One year data from a prospective multicenter study. J Am Acad Dermatol. 2026;94(2):517-524.
治療の流れ
- ホームページの記載をよく読み、前日の17時00までに電話予約をお願いします。18歳未満の場合は必ず法定代理人(親権者)の同意が必要ですので、受診当日の法定代理人の同伴が必須となります(初回のみ)。
- 遠方の方を除き、原則として初診時には診察及び説明のみとさせていただきます。初診時に施術を希望される方は必ず事前にお電話ください。
- アビクリアの施術は主に平日に行っております。10時30/11時30/14時30/15時30/16時30/17時30です。土曜日は11時00および12時00のみです。土曜日は大変予約が取りにくいため、平日にも施術が受けられるようスケジュール調整が必要になるものとお考え下さい。1カ月おきの施術が基本ですが、予定が難しければ6~8週程度まで期間が空くのは許容範囲内です。予約時間の20分前までにお越しください。
当日の流れ(必ずご確認ください)
- 治療部位のひげを剃っておいてください(前日または当日朝)
- 予約時間の20分前までに来院
- パウダールームでメイクを落とす。※メイク落としを持参ください
- アビクリア照射(10~30分程度)チクチクするような軽度の痛みを感じることがあります
- 帰宅。当日直後からメイク・洗顔が可能です。
※当日は長湯、サウナ、激しい運動、飲酒などは控えてください。治療直後に赤みや腫れが生じることがありますが、数時間~2日程度で治まります。
アビクリアの治療費
| おでこ(1回) | 41,800円(税込) |
| こめかみ(1回) | 30,800円(税込) |
| 鼻(1回) | 30,800円(税込) |
| 両ほほ(1回) | 41,800円(税込) |
| あご(1回) | 41,800円(税込) |
| あご下(1回) | 41,800円(税込) |
| 上記2部位(1回) | 63,800円(税込) |
| 上記3部位以上(1回) | 88,000円(税込) |
| 25㎠までの限定照射(1回)※ | 24,200円(税込) |
※看護師または医師が施術を行います。施術者の指名はできません。
※当院でイソトレチノインの治療歴(処方日数)が6ヶ月間以上ある方に限り、上記とは別の治療費を提案させていただきます。詳細はお電話または診察時にお問合せください。
上記以外に下記診察料を申し受けます。予めご了承ください。
| 初診料 | 3,300円(税込) |
| 再診料 | 1,100円(税込) |
※各種クレジットカードがご利用いただけます。
治療ができない方
- 妊娠中の方
- 皮膚がんの治療を受けている(治療の影響が不明なため)
- 異形成母斑や色素性病変の疑いがある部位
- ペースメーカーや人工内耳などの埋め込み型デバイスを使用中の方
- 刺青やアートメイクの上やその付近(治療の影響が不明なため)
注意点について
以下に該当する場合は注意を要します(治療による影響が不明なため)
- イソトレチノインの内服歴がある
- 光増感剤(テトラサイクリン系など)を使用したことがある、または最近まで使用していた。
- 血液抗凝固剤を使用している、または最近まで使用していた。
- 治療部位にニキビ以外の炎症性皮膚疾患がある
- 治療部位に悪性腫瘍等の既往歴がある
- 出血性疾患の既往歴がある。
- ケロイドや肥厚性瘢痕の既往歴がある
- 白斑や色素性疾患の既往歴がある
- 治療部位に創傷がある
- ヘルペスの既往歴がある(抗ウイルス剤による前処置が必要な場合あり)
- 中学生未満の方
- 注入治療、糸リフト、プロテーゼなど人工物が入っている部位
アビクリアとイソトレチノインどちらが良いか?
両者ともに難治性ニキビに対し双璧をなす治療です。どちらが良いか明確な答えはなく、以下の項目のYES/NOで変わってきます。以下、アビクリア(AVI)イソトレチノイン(ISO)と表記します。
1.1日でも早くニキビを治したいか?長期的な視点で治したいか?
早く結果を求めるなら即効性のあるISOをお勧めします。AVIに即効性はありませんが、治療終了してから1年後にピークに達し、その後も持続的/長期的に効果が続きます。一方でISOは内服終了直後(6カ月後)がピークであり、その後はゆるやかに効果が落ちてくる場合があります。
2.中学生または高校生(成長期)
ISOの副作用として身長の伸びや精神疾患への影響などが指摘されています。最新の論文によればあまり心配する必要はありませんが、AVIにはそうした懸念は全くありません。また年齢が若いほどISO治療は再発率が高く、また治療が長期化することが想定されます。特に中学生くらいの年代は前額(おでこ)が悪化しやすく、おでこへのAVI照射がお勧めです。
3.背中や胸など広範囲にニキビがある
ISOは全身性に作用するため、顔だけでなく体幹のニキビにも優れた効果を発揮します。一方でAVIの効果は照射部のみに限定されます。胸や背中にも照射は可能ですが、範囲が広い場合にはISOを強くお勧めします。
4.オイリー肌に悩まされている
ISOもAVIもオイリー肌に有効です。しかしISOは内服終了して数カ月後には次第に皮脂の分泌が増えてくる傾向にあります。一方でAVIは長期に効果が持続するため、オイリー肌に悩まされている方にはAVIをお勧めします。
5.挙児希望/内服の副作用が心配
ISOは妊娠中の方には絶対禁忌です。内服終了後も1ヵ月間は避妊が必須です。AVIも禁忌ですがISOほどの危険性はないとされています。またAVIの治療期間は高々3カ月間ですので、避妊期間はISOよりも短くて済むという利点があります。また、その他の理由でISOが懸念される場合もAVIをお勧めします。
6.使用経験が豊富な治療を受けたい
AVIは2022年に米国FDAに認可され、2025年日本でも認可されました。新しい治療法であり臨床データの蓄積は不十分です。一方でISOは40年以上の歴史があり、エビデンスが豊富です。海外のガイドラインでも強く推奨されています。
7.費用は度外視で最高の治療を受けたい
AVIとISOの併用をお勧めします。「原則として併用しない」とされていますが、海外の論文では相乗効果が得られることが報告されています(※併用ご希望の方は必ずお電話で事前にお申し出ください)。当院では再発率を低くする/最大の効果を得るための様々な提案をしています。
Key Points
①アビクリアとイソトレチノインは難治性ニキビに対し双璧をなす治療法である
②どちらが良いかは治療目標などによって変わりうる
2.イソトレチノイン
イソトレチノインはスイスの製薬会社ロシュが開発したもので、炎症をともなう重症ニキビ(難治性ニキビ)に対して非常に高い効果があります。ニキビは白人の方が重症化しやすく、海外では古くから重症ニキビ治療薬の第一選択として使われています。イソトレチノインの商品名としてアキュテイン、ロアキュテイン、ロアキュタン、アクネトレントなどがあります。
イソトレチノインは皮脂の分泌を抑制し、皮脂腺を小さくさせる効果があります。顔だけでなく胸/背中のニキビに対しても優れた効果を発揮します。約6ヶ月間の内服で治療は終了です。難治性ニキビに対して確実に効果があり、大半の方はニキビがほぼゼロになります。その後の再発率は3割程度と報告されています。2008年以前の日本ではビタミン剤や抗菌薬が中心で、世界標準からかけ離れた治療が行われてきました。アダパレンや過酸化ベンゾイル(ベピオ)が承認され、近年ようやく世界標準に追いついてきましたが、まだまだ遅れています。難治性ニキビは経口イソトレチノインで治療するのが世界のスタンダードです。
当院ではイソトレチノインを最終手段と考えるのではなく、早期治療の選択肢の1つとしてお勧めしています。その理由は以下の3点です。
- ニキビを繰り返すことで仕事や学業に専念できないなどといった社会的損失は、決して小さくはないことが明らかにされている。
- 保険治療で何年もニキビの再発に悩まされるくらいなら、多少の費用がかかっても短期間でサッサと完治させた方が良い
- 長年ニキビが続くと瘢痕が形成されることがあり、瘢痕の治療は非常に難しく、費用も時間もかかる。イソトレチノインの早期導入により瘢痕を予防することができる
新生ニキビを繰り返す状態では新たにニキビ跡や赤みが生じる可能性があり、永久に肌がきれいにならない悪循環が続いてしまいます。まずはイソトレチノインでニキビを完治させることを目指しましょう。当院では最も信頼性が高いとされるイタリアRecordati社製アクネトレントを採用しています。日本では保険適用がないため費用はかかりますが、それだけの価値があります。なお、当院では美容カウンセラーが説明や治療を担当することはありません。
治療の流れ
ホームページの記載を熟読の上、WEB予約を取って来院ください。18歳未満の場合は必ず法定代理人(親権者)の同意が必要ですので、受診当日の法定代理人の同伴が必須となります(初回のみ)
従来の保険治療ではニキビは必ず再発します。当院では「重症例のみ」に限定するという方針ではなく、重症でなくても希望があれば積極的に治療しています。自由診療のメリットを最大限活用するのが良いです。
- 初回は30日分処方します。
- 次回以降は60日分の処方が可能です。
当院では最大限の効果をあげるための使用法を提示し、再発率をできるだけ低くすることを目指します。また重症ニキビの患者さんは粉瘤やケロイドを併発していることも多く、当院で外科的切除を行うことも可能ですし、熟練した形成外科医をご紹介することもできます(保険適応あり)。
1日の投与量は0.5mg/kgです。例えば体重50kgであれば1日の投与量は25mgとなります。食中または食後に内服してください。空腹時に内服してはいけません。治療期間は6ヵ月間が目安です。服用開始してから最初の1ヵ月で一時的に症状が悪化する場合がありますが、自然に改善するのを待ちましょう。次第に落ち着きます。投与前に血液検査を行います。健康診断など直近の採血データを持参いただければ代用できます。再発または効果不十分の場合には最低8週間以上の間隔を空け2回目の治療を行います。
ニキビ後の赤みは自然軽快しますが、非常に時間がかかり数カ月~数年におよぶ場合があります。少しでも早く消す方法としてトラネキサム酸やVビームまたはトレチノイン・ハイドロキノン外用療法をお勧めします。詳細は下記をご参照ください。
イソトレチノインの治療費
- イタリアRecordati社製アクネトレント
| イソトレチノイン20mg 30日分 | 20,900円(税込) |
|---|---|
| イソトレチノイン30mg 30日分 | 31,350円(税込) |
| イソトレチノイン40mg 30日分 | 41,800円(税込) |
体重や重症度にもよりますが、初期量(標準量)として女性20mg/男性30mgで開始することをお勧めします。効果不十分の場合は増量を検討することがありますが、最重症かつ体重70kg以上の方は40mg必要と考えられます。
スピロノラクトンの治療費
| スピロノラクトン25mg 100錠 | 5,500円(税込) |
|---|
当院ではスピロノラクトンによるホルモン治療も行っています。作用メカニズムの観点から女性のみ対象となります。本来は降圧薬ですが、抗アンドロゲン作用があり男性ホルモンを抑え、ニキビに効果を発揮します。通常の保険治療よりも強力な効果が期待でき、安全性が高く、イソトレチノインよりも治療費を抑えることができます。デメリットとして効果が現れるまで多少時間がかかり、中止後は再発しやすいことです。内服4カ月(早ければ1~2カ月)で徐々に効果が現れ、1年後の有効率は95%以上です。初期量として1日100~200mgで開始し、効果判定しながら徐々に減量します。費用対効果を狙うなら最初の2カ月間程度はイソトレチノインを内服し、その後はスピロノラクトン少量内服に切り替えてメンテナンスを図る方法もあります。主な副作用は生理不順や不正出血が生じることがあることです。その場合、低用量ピルを併用して規則正しい生理周期に誘導することが推奨されます。当院でピル処方はしておりません。まれですが内服量が多いと排卵を抑制することもあるため、必ず服薬指導を守るようにしてください。電解質異常や急性腎不全も副作用としてあげられていますが、実際には持病がなく、ニキビを生じるような若い方にそのような症状が生じることはほとんどありません。「スピロノラクトンのポジショニング」の記事を一読ください。
- ニキビ後の赤み治療
※原則として新生ニキビがほとんど出なくなってから行う治療です。
| VビームⅡ 1回 | 25,300円(税込) |
|---|
※施術者は院長のみ
※赤みの原因となっている血管をターゲットとした治療法です。ニキビ後の赤みには様々なレーザー治療が行われますが、当院ではVビームを行っています。個人差はありますが2~4週間おきの治療を数回行うことで効果が実感できます。副作用として腫れや皮下出血(紫斑)が出ることです。多くの場合、数日で治まりますが、イベント前などは避けておきましょう。初期型Vビームは4つのサブパルスでしたが、VビームⅡ以降は8つのサブパルス構成となっています。これにより、紫斑(内出血)などの副作用が抑えられるようになりました。費用面で難しそうなら以下に示すトラネキサム酸の併用やトレチノイン・ハイドロキノン療法をお勧めします。
- トラネキサム酸の併用のすすめ
| トラネキサム酸500mg(先発品) 100錠 | 2,970円(税込) |
|---|
2025年の最新の論文で経口イソトレチノインにトラネキサム酸を併用することでニキビ後の赤みや再発率を有意に低下させることが報告されました。試してみる価値は十分あるでしょう。詳細は「トラネキサム酸の有用性」の記事を一読ください。
- トレチノイン・ハイドロキノン療法
トレチノインはビタミンA誘導体であり、肌のターンオーバーを促進させることでシミ・シワの改善効果が期待できます。同時にニキビ後の赤みを早く消す効果があります。ハイドロキノンは直接赤みを消す効果はありませんが、炎症後色素沈着(茶色のシミ)の発生を抑える効果があり、美白剤として使用されています。
| トレチノイン0.05% 20g | 2,200円(税込) |
|---|---|
| トレチノイン0.1% 20g | 2,530円(税込) |
| ハイドロキノン4% 20g | 2,750円(税込) |
【使用方法】洗顔後にトレチノインをニキビ後の赤みに少量薄く塗り、3~5分後にハイドロキノンをひと回り広く重ね塗りしてください。トレチノインはニキビ後の赤みを早く消す効果があります。日中はSPF30以上のUVカット下地を塗り、その後にメイクしていただいて結構です。
【注意点】トレチノイン外用で肌のターンオーバーが早くなると、古い角質がポロポロ剥がれ落ちます。肌が刺激を感じやすくなり、痒み・赤み・乾燥症状が起こることがあります(レチノイド反応)。1カ月程度で徐々に回復することがほとんどですが反応が強すぎる/反応がない場合はご相談ください。トレチノインは冷蔵庫保管が望ましいです。
※開封時にチューブ出口のフィルムが残存する場合があります。ハサミ等でフィルムを除去してください。
これ以外に下記診察料を申し受けます。予めご了承ください。
| 初診料 | 3,300円(税込) |
|---|---|
| 再診料 | 1,100円(税込) |
| 血液検査 | 3,300円(税込) |
※各種クレジットカードがご利用いただけます。
イソトレチノイン内服治療を受けることができない方
- 妊娠中の方(胎児に異常が出る可能性が報告されています)
※男女ともに内服中および内服終了後1ヵ月間の避妊が必要です。また内服中および内服終了後1ヵ月は献血できません。 - 現在授乳中の方
- 成長期の方(15歳以下)※12歳以上でも可能だが要相談
- テトラサイクリン(抗生物質)で治療を受けている場合
- ピーナッツや大豆にアレルギーがある方
- 心疾患や肝機能障害のある方
- 中性脂肪、コレステロールの高い方(脂質異常がある方)
- ビタミンA過剰症の方
- イソトレチノインを個人輸入している・オンライン診療を受けている場合
※医薬品の個人輸入は深刻な健康被害をもたらす危険性があります。日本語の通販サイトであっても会社の拠点は海外にあり、偽造薬が流通していることもあるからです。当院では個人輸入やオンライン診療で生じた副作用その他の問題に関しての診察・相談をお受けすることはできません。
※うつ病などの精神疾患があっても当院では治療可能です。詳細は診察時にご相談ください。
イソトレチノインの主な副作用と対応方法
妊娠中の女性は使用できません。胎児に深刻な害を及ぼす可能性があるからです。
その他、皮膚や粘膜の乾燥症状(特に唇の乾燥)の頻度が高いことが知られています。
保湿剤やワセリン、点眼液などで対応可能です。あらかじめドラッグストアで購入しておきましょう。
重症ニキビと難治性ニキビは異なる
ほぼ同じだと思われがちですが、よく考えてみると両者は異なることに気がつきます。重症ニキビに対してベピオゲルやデュアックゲルなどの標準治療を適切に行えば、それなりの効果が得られ、やがて軽度~中等度の症状に落ち着きます。しかし、そこからなかなか良くならず治療が長期におよぶ場合があります。つまり症状は軽度~中等度であるが、難治性のニキビというわけです。そのようなケースではやはりイソトレチノイン内服が推奨されます。重症でなければ適応外などという保険診療にありがちな処方制限がないのが自由診療のメリットです。
中等度のニキビ患者638名にイソトレチノインを1日20mg(低用量)投与したところ、12~20歳の患者で94.8%、21~35歳の患者で92.6%が良好な結果が得られたと報告されています(文献1)。重症ニキビはもちろん、中等度ニキビにも優れた効果を発揮します。中等度ニキビに対するイソトレチノイン低用量での内服治療は、患者満足度が高く、かつ副作用の少ない最適な治療法であると報告されています(文献2)。ただし低用量だと再発率が高くなるという意見もあるため注意深い経過観察が必要です。
難治性のニキビは単に皮膚だけの問題ではなく、ホルモンバランスや皮脂腺などをはじめとする体の内側の問題が大きいです。外用薬やピーリング、レーザー治療など外側からのアプローチだけではニキビの再発を抑えるのが難しいこともあります。米国ガイドラインでも中等度以上のニキビには内服治療が推奨されています。イソトレチノインは皮脂腺のアポトーシス(細胞死)を誘導させることが報告されており(文献3)、再発率が低くなる理由の1つと考えられます。したがって軽度~中等度であるが再発を繰り返す難治性ニキビに対して非常に有効性の高い治療と言えるでしょう。最近では中等度のニキビに対しても最初からイソトレチノインを使うのが世界的な潮流になっています。
Key Points
①中等度ニキビに対してもイソトレチノインは有用である
②中等度ニキビではイソトレチノインは低用量でも十分な効果が期待できるが、再発率が高くなる可能性がある
(文献1)Amichai B et al. Low-dose isotretinoin in the treatment of acne vulgaris. J Am Acad Dermatol. 2006;54:644-6.
(文献2)Lee JW et al. Effectiveness of conventional, low-dose and intermittent oral isotretinoin in the treatment of acne: a randomized, controlled comparative study. Br J Dermatol. 2011;164:1369-75.
(文献3)Nelson AM et al. 13-cis Retinoic acid induces apoptosis and cell cycle arrest in human SEB-1 sebocytes. J Invest Dermatol. 2006;126:2178-89.
ニキビの再発率を考える
ニキビの再発は非常に悩ましい問題です。初期の微小面皰を治療することで再発を抑えることができます。それが可能な薬剤は過酸化ベンゾイルとアダパレンの2つのみです。商品名ではベピオ、ディフェリン、デュアック、エピデュオです。いずれも診療ガイドラインでも取り上げられている標準治療薬ですが、外用をやめてしまえば必ず再発してしまいます。実際に何年も皮膚科クリニックに通院しても、ニキビが完治しない患者さんがたくさんいます。
一方でイソトレチノインは皮脂腺を退縮させる作用があるため、再発を抑えることができ、かつ再発しても症状は軽度で済みます。ただし、再発率は文献によってかなりのばらつきがあるためあまり参考になりません(そもそも再発をどのように定義すべきかという問題があります。定義が変われば再発率も変わります)。再発率はイソトレチノインの投与量、投与期間、併用薬の有無、重症度、年齢、性別など様々な要素が関与するため一概には言えませんが、おおむね30%程度と考えておけば良いでしょう。Quéreuxらは再発率が高くなる患者背景として、年齢が若いこと、家族歴があること、胸や背中にもニキビがあることを挙げています(文献1)。これらに該当する場合には投与量を多くすることが望まれます。なお、最新のメタアナリシスによれば再発率を下げるにはイソトレチノインは低用量ではなく、通常量が推奨されています(文献2)。
海外では中等度~重度のニキビに対するイソトレチノインは第一選択として位置づけられおり、世界のスタンダードなのです。すでにお気づきのように日本のニキビ治療は海外に比べて大きく遅れています。当院でイソトレチノインを希望される患者さんは重症の方ばかりではありません。中等度で再発率の低い治療を希望される方も多い印象です。難治性ニキビはもちろん、治療満足度が低い場合にも有力な選択肢です。当院ではマニュアル通りに処方するのではなく、イソトレチノインの最適な内服量や使用法を提示します。最大限の効果をあげ、再発率を可能な限り下げることを目指します。
Key Points
①従来の保険治療におけるニキビの再発率はほぼ100%である
②イソトレチノイン内服治療は再発率が低く、再発しても症状は軽度で済む
③イソトレチノインは難治性ニキビの世界標準治療薬である
(文献1)Quéreux G et al. Prospective study of risk factors of relapse after treatment of acne with oral isotretinoin. Dermatology. 2006;212:168-76.
(文献2)Al Muqarrab F, Almohssen A. Low-dose oral isotretinoin for the treatment of adult patients with mild-to-moderate acne vulgaris: Systematic review and meta-analysis. Dermatol Ther. 2022;35:e15311.
イソトレチノインの効果的な投与方法 “Strong Finish”とは?
重症ニキビに対する最高の治療法はイソトレチノイン内服です。しかし、適切な使用方法を知らないで治療を行うと、有効率が低くなり、再発率も高くなります。皮膚科専門医の適切な指導を受けることが大切です。
各国ガイドラインごとに推奨される量に差がありますが、体重に応じて投与量は変わります。例えば欧州ガイドラインでは投与量0.3~0.5 mg/kg/day(最重症型では0.5 mg/kg/day以上)を推奨しています。一方で米国ガイドラインでは最初の1カ月間は0.5 mg/kg/day以下で開始し、その後は最大1 mg/kg/dayまで増量することを推奨しています(体重60kgの場合、0.5 mg/kg/dayで計算すると投与量は1日30mgになります)。治療期間については欧州ガイドラインでは最低6ヵ月間、Gollnickらは16~24週間以上を推奨しています(文献1)。明確な治療期間を設定するのではなく、ニキビ完全消失後からプラス1ヵ月間の投与が最も合理的とする意見もあります(文献2)。以上より治療期間は状況次第と考えてよいと思われますが、添付文書には6ヵ月間と記載されています。また内服開始後の一時的な増悪(フレア)予防のため、初期開始量を0.2 mg/kg/day以下に抑えることを推奨する意見もあります(文献3)。
総累積投与量について米国ガイドラインでは120~150 mg/kgを推奨しています。前述のように体重60kgで1日30mg内服するならば120 mg/kgを達成するには240日(8ヵ月)かかる計算になります。また総累積投与量が 220 mg/kgを超える高用量での治療は、再発リスクを減少させることが報告されています。高用量での治療を受けた288名の患者データによれば、治療のラスト2ヶ月間の体重あたりの投与量が高いほど再発リスクが減少することがあきらかになりました(オッズ比 [OR] = 0.21)。したがってラスト2ヶ月間に”Strong Finish”として増量投与を検討すべきと提言しています(文献4)。また同論文で再発リスクが高いのは女性(OR = 2.81)、黒人またはアフリカ系アメリカ人(OR = 6.60)、治療期間が長い(OR = 1.70)であることも報告されました。欧米人に比べ、日本人では投与量は少なくても良いとする根拠になりうるデータと言えるでしょう。各国のガイドラインにばらつきがあるのは重症ニキビの分類基準が異なることや、人種差による再発リスクの違いが一因と考えられます。
最後に投与のタイミングです。空腹時に内服すると吸収率が落ちるため、必ず食後に内服することです。内服2~4時間後に血中濃度が最大となり、ミルク・バター・チーズなど脂質を含む食事を取ることで吸収率が1.5~2倍に高まることが報告されています(文献5)。また内服方法は1日1回が良いのか2回にわけて内服するのが良いのか海外のどのガイドラインでも結論が出ていません。
Key Points
①初期投与量0.5 mg/kg/day以下で開始し、状況に応じて増量を検討する
②脂質を含む食事のあとに内服することで吸収率を高めることができる
③”Strong Finish”と呼ばれる新しい内服方法が提言されている(ラスト2カ月間で増量)
※経過が良い場合や副作用が懸念されるケース、特に希望がない場合は増量しません。
(文献1)Gollnick HP et al. A consensus-based practical and daily guide for the treatment of acne patients. J Eur Acad Dermatol Venereol 2016;30(9):1480-1490.
(文献2)Thiboutot DM et al. Practical management of acne for clinicians: an international consensus from the Global Alliance to Improve Outcomes in Acne. J Am Acad Dermatol 2018;78(2 Suppl 1):S1-S23.e21.
(文献3)Borghi A et al. Acute acne flare following isotretinoin administration: potential protective role of low starting dose. Dermatology. 2009;218(2):178-80.
(文献4)Summers EG et al. Risk factors for acne relapse and isotretinoin retreatment after initial treatment of acne vulgaris with high-dose isotretinoin: A retrospective cohort study. J Am Acad Dermatol. 2026;94(1):256-258.
(文献5)Colburn WA et al. Food increases the bioavailability of isotretinoin. J Clin Pharmacol. 1983;23(11-12):534-9.
トラネキサム酸の有用性
トラネキサム酸(以下TXA)は美容皮膚科領域では肝斑に使われる定番の薬です。イソトレチノイン(以下ISO)で治療を行うとニキビはほぼゼロになる一方で、再発やニキビ後の赤みに悩まされるケースが多々あります。赤みにはVビーム等が有用ですが、治療費やダウンタイムが問題になります。最新の論文でTXAを併用すると赤みを抑えるだけでなく、再発率も低下させる可能性が報告されたので内容をご紹介します(文献1)。
合計72名が二重盲検比較試験に登録され、60名(ISO + TXA群33名 ISO単独群27名)が12週間の追跡調査を完了しました。結果はISO + TXA群は単独群よりも優れた有効性を示しました。炎症性病変の90%以上減少した患者の割合(81.82% vs 30.30%)、治験責任医師による全般的評価が2段階以上改善した割合(72.73% vs 29.63%)、副作用の発生率(25.00% vs 75.00%)、皮膚のバリア機能を担うフィラグリン含有量の増加(59.68% vs 19.24%)、炎症後紅斑(紅斑指数減少率 22.54% vs 11.49%)および炎症後色素沈着(色素沈着指数減少率 9.25% vs 6.15%)の改善においていずれも優位性を示しました。さらに24週間の追跡調査でISO + TXA群で再発はありませんでした。
以上よりTXAの併用は、有効性を高めるだけでなく、炎症後紅斑または炎症後色素沈着の改善、副作用の軽減、および再発率を低下させる、最適化された治療アプローチと言えます。ただし、これらの知見は今後、大規模な多施設共同試験や基礎的なメカニズム研究によって検証される必要があります。昨今の美容皮膚科ブームで様々な高額な治療がありますが、エビデンスが不十分な治療もあるようです。TXAは安価でかつ安全性も確立されています。なお、TXA単独による上記の効果は検証されておらず、ISOと併用して初めて効果が期待できるものです。
Key Points
①トラネキサム酸内服を併用するとイソトレチノイン治療後の赤みを抑える効果が期待できる
②イソトレチノインの効果を最大化させ、かつ副作用を最小化させる可能性がある
(文献1)Xu B et al. Optimized combination: Isotretinoin in conjunction with oral tranexamic acid for the treatment of moderate to severe acne vulgaris-A randomized, double-blind, placebo-controlled trial. J Am Acad Dermatol. 2025 Nov;93(5):1312-1314.
スピロノラクトンのポジショニング
スピロノラクトンは降圧剤ですが、成人女性のニキビに高い有効性があることが知られています。米国FDAからニキビ治療薬として認可を受けていませんが、中等度以上のニキビに対して海外のガイドラインでも推奨されています。1日50~200mg内服するのが効果的であり、皮脂の分泌を抑える作用もあると報告されています(文献1)。
スピロノラクトンは安全性が高い薬ですが、生理不順などの副作用が起こる場合があり、長期継続するには低用量の方が無難です。近年、スピロノラクトン少量内服とベピオを併用することで良好な結果が得られたと報告されています(文献2)。別の見方をすれば、ベピオやデュアックゲルなどで効果不十分な場合でも、スピロノラクトンを少量追加することで良好な結果が得られる可能性があります。なお、抗生剤は微小面皰には無効であり、かつ耐性菌を生み出す可能性があるため、診療ガイドラインでも長期使用は推奨されていません。スピロノラクトンを長期内服する方がよいでしょう。
2025年Laiらはイソトレチノイン投与終了後にスピロノラクトンを処方された1006人の患者のうち、その後イソトレチノインの再投与を受けたのはわずか41人(約4%)だったと報告しています(文献3)。スピロノラクトンは単独でも効果がありますが、イソトレチノイン治療後の再発予防としても有用であることを示しています。投与量や期間など詳細については診察室で説明致します。
Key Points
①スピロノラクトンは成人女性のニキビ治療薬として有用性が高い
②ベピオとの併用でスピロノラクトンは少量内服でも優れた効果を発揮する
③イソトレチノイン治療後にスピロノラクトンを開始することで再発率を下げることができる
(文献1)Goodfellow A, Alaghband-Zadeh J, Carter G, et al. Oral spironolactone improves acne vulgaris and reduces sebum excretion. Br J Dermatol. 1984;111:209-214.
(文献2)Patiyasikunt M et al. Efficacy and tolerability of low-dose spironolactone and topical benzoyl peroxide in adult female acne: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial. J Dermatol. 2020;47:1411-1416.
(文献3)Lai J, Barbieri JS. Acne Relapse and Isotretinoin Retrial in Patients With Acne. JAMA Dermatol. 2025;161(4):367-374.
イソトレチノイン投与は最終身長に影響しない
イソトレチノイン(以下ISO)の適応年齢は12歳以上ですが、身長の伸びに影響がある可能性が指摘されています。最新の海外の研究(ロチェスター疫学プロジェクトのデータを用いた後ろ向きコホート研究)によれば、思春期の身長増加速度を一時的に低下させるものの、最終身長には影響しないことがあきらかにされました(文献1)。
ISO治療群226例と対照群1,179例を解析対象とし、身長増加速度は薬剤開始前後1年以内に測定された身長データから計算され、最終身長は18歳時点で記録されました。年齢と性別を調整した多変量回帰モデルを用いて解析が行われ、思春期のニキビ治療におけるISOの身長への影響を評価したものです。ISO治療群は、治療後の身長増加速度が対照群と比較して有意に低下し(-0.12 cm/月, 信頼区間:-0.21~-0.04, p = 0.005)、治療前と比較した治療後の身長増加速度の減少も、ISO治療群でより大きいことが報告されました(-0.31 cm/月、信頼区間:-0.54~-0.07、p = 0.011)。しかし、結論としては15歳未満でISOを開始した群と経口抗生物質による治療を受けた対照群を比較し、18歳時点での最終身長に有意差がないことが示されました。
TriNetXを用いた研究(文献2)でもほぼ同様の結果が得られており、治療中わずかに伸長速度が低下することはあっても、一時的なもので治療終了後は解消されることが示されています。また同研究においてISO累積投与量と最終成人身長の間には関連は認められませんでした。以上より、ISOは成長期(13歳~17歳)であっても重症度によっては検討する余地は十分あると考えられます。
Key Points
①思春期の経口イソトレチノインは身長増加速度は一時的に低下する可能性はあるが、最終身長への影響はない
②経口イソトレチノインの累積投与量は最終身長に影響しない
(文献1)Xu KK et al. The effect of isotretinoin treatment for acne vulgaris on height in adolescents: A retrospective cohort study using the Rochester Epidemiology Project. J Am Acad Dermatol. 2025;93(6):1464-1470.
(文献2)Cole HL et al. Pediatric isotretinoin use for acne is not associated with meaningful effects on adult height: A retrospective cohort study using TriNetX. J Am Acad Dermatol. 2025 Nov 22:S0190-9622(25)03265-7.
うつ病があるとイソトレチノイン内服はできないのか?
1982年~2000年までの間にイソトレチノイン内服治療を受けた患者で431例のうつ病、自殺/自殺企図/自殺念慮があったことを米国FDAが報告しました(文献1)。このうち実際の自殺者は37名(男性31名、女性6名)、年齢の中央値17歳で若い男性に多かったことが報告されています。米国FDAは警告を発し、1998年より添付文書に精神疾患がある場合は慎重に投与すべきと記載されるようになりました。しかし、イソトレチノイン内服治療と精神疾患との因果関係は不明な点が多く、今日まで多くの論争があります。
海外の研究では思春期の重症ニキビはメンタルに悪影響を及ぼし、生活の質を著しく低下させ、自殺念慮を引き起こす頻度が男性で3倍以上、女性で2倍以上になると報告されました(文献2)。しかし、近年のメタ解析ではイソトレチノイン内服治療によってうつ症状が著明に改善され、うつ病のリスク増加と関連しないことが示されました(文献3)。また、台湾においてイソトレチノイン内服治療患者29,943名を調査したところ、治療期間が長期に及んだり投与量が多くなっても、精神障害を起こすリスクは上昇しなかったと報告されました(文献4)。同じアジア人での研究結果は重要な意味を持つと考えられます。
さらに2023年の最新の世界的なコホート研究でも自殺やうつ病のリスクを上昇させないことが報告されました(文献5)。この研究ではイソトレチノイン内服群と抗生剤内服群とを比較し、カプランマイヤー曲線を用いてイソトレチノインを内服した方が自殺率が低くなることが証明されました。ただし、この論文にはいくつかの批判もあります。例えば両群の患者背景(特に精神疾患の重症度)が異なることや観察期間が長すぎるなどバイアスがあると指摘されています(文献6)。これに対してKridinらは、重症ニキビ患者はもともと精神疾患を抱えるリスクが高く、むしろイソトレチノインの安全性を過小評価していると反論しています。また2024年の最新のメタ解析でもイソトレチノインは自殺や精神疾患のリスクを高めることはなく、むしろ治療後2~4年で自殺企図のリスクが低くなると結論づけられています(文献7)。
Key Points
①重症/難治性ニキビがうつ症状を増悪させるという報告があり、イソトレチノイン内服治療によりうつ症状が改善する可能性がある
②近年の研究論文によればイソトレチノイン内服治療によって精神疾患のリスクは上昇しないという見解がほとんどである
(文献1)Wysowski DK et al. Depression and suicide in patients treated with isotretinoin. N Engl J Med. 2001;344:460.
(文献2)Halvorsen JA et al. Suicidal ideation, mental health problems, and social impairment are increased in adolescents with acne: a population-based study. J Invest Dermatol. 2011;131:363-70.
(文献3)Huang YC, Cheng YC. Isotretinoin treatment for acne and risk of depression: A systematic review and meta-analysis. J Am Acad Dermatol. 2017;76:1068-1076.e9.
(文献4)Chen YH et al. Risk of psychiatric disorders in patients taking isotretinoin: A nationwide, population-based, cohort study in Taiwan. J Affect Disord. 2022;296:277-282.
(文献5)Kridin K, Ludwig RJ. Isotretinoin and the risk of psychiatric disturbances: A global study shedding new light on a debatable story. J Am Acad Dermatol. 2023;88:388-394.
(文献6)Loh CH et al. Interpreting with caution of the lack of association between isotretinoin, depression, and suicide. J Am Acad Dermatol. 2023;89:e213-e214.
(文献7)Tan NKW et al. Risk of Suicide and Psychiatric Disorders Among Isotretinoin Users: A Meta-Analysis. JAMA Dermatol. 2024;160:54-62.
イソトレチノインの副作用
イソトレチノインが初めて認可された1983年当時は副作用のチェックのために定期的な血液検査が推奨されていました。現在、欧州ガイドラインでは治療前、1ヵ月後、3ヵ月後の採血、米国ガイドラインでも脂質異常と肝機能障害のチェックが推奨されています。しかし、副作用の頻度は実際には低いことがあきらかとなってきており、毎月の血液検査までは不要であると報告されました(文献1)。さらに2022年、アメリカとイギリスの研究チームは125本の研究論文をレビューした結果、報告された有害事象は非常にまれであり、健康な若年者ではイソトレチノイン経口投与時の臨床検査モニタリングは不要であると結論づけました(文献2)。副作用チェック目的の採血が有益であることを支持するエビデンスはないとしています。ただし、論文の最後に「この考え方は修正が必要になる可能性はある」と述べています。
イソトレチノインの添付文書を見ると数多くの副作用の可能性があげられています。その中で最も注意すべきことは、流産のリスク上昇や胎児への催奇形性があることです。献血ができないのも妊婦に輸血されるリスクがあるためです。添付文書には内服中および内服後1ヵ月間避妊することと記載されていますが、実際には安全性のマージンを取って内服後6ヵ月間空けるよう推奨している施設が多いようです。その他、頻度が高い副作用としては皮膚や口唇および目・口・粘膜の乾燥です。特に口唇の乾燥はほぼ100%近く現れるため、プロペト(ワセリン)などの保湿剤をあらかじめ準備しておきましょう。
Key Points
①イソトレチノイン治療では頻回の採血検査の必要性は否定されている
②特に注意すべきなのは「男女とも避妊が必須」「献血は不可」以上2点である
(文献1)Lee YH et al. Laboratory Monitoring During Isotretinoin Therapy for Acne: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Dermatol. 2016;152:35-44.
(文献2)Affleck A et al. Is routine laboratory testing in healthy young patients taking isotretinoin necessary: a critically appraised topic. Br J Dermatol. 2022;187:857-865.