乾癬・掌蹠膿疱症

乾癬(かんせん)について

乾癬とは?

遺伝的背景になんらかの環境因子が加わることで発症する皮膚疾患です。通常、皮膚の表面は28日~40日で生まれ変わりますが、これが大幅に短縮されることで角質が次々と剥がれ落ちてきます。

欧米人に多く、多彩な臨床症状をきたします(図参照)。皮膚だけにとどまらず、全身性の炎症性疾患と考えられています。

臨床写真の出典 Boehncke WH et al: Psoriasis. Lancet 2015;386:983–94.

乾癬の症例

乾癬の治療法

外用療法、内服療法、紫外線療法、注射療法など多くの治療法があります。選択肢が多く、どの治療法を選択すべきか迷うことも少なくありません。一方で、乾癬の治療薬はやたらと値段が高いものが多く、費用対効果を考えながら作戦を立てなければなりません。

また、薬剤ばかりに頼るのではなく、生活習慣に気を配ることも大切です。以下、どのような治療法があるのかご紹介します。

治療法1 生活習慣の改善

乾癬は生活習慣病との関連性が指摘されています。特に肥満と皮疹重症度は密接な関係にあることが報告されています(文献1)。栄養バランス・禁煙・適度な運動・規則正しい生活を送ることなどが大切ですが、特に適正な体重コントロールが重要と考えられています。

(文献1)Armstrong AW et al. The association between psoriasis and obesity: a systematic review and meta-analysis of observational studies. Nutr Diabetes. 2012;2:e54.

治療法2 外用療法

ステロイド外用薬とビタミンD3軟膏の2つに分けられます。以前はこれらの薬剤を混合して処方されることが多々ありました。しかし、混合処方の問題点が指摘され、今では混合処方される機会は少なくなりました。

一方で、ステロイド外用薬とビタミンD3軟膏の合剤(ドボベット、マーデュオックス)が発売され、乾癬の外用薬としては最も優れた薬剤として広く使われています。ドボベットは軟膏、ゲル、フォームの3種類ありますので部位によって、好みに合わせて使い分けることができます。

治療法3 内服療法

乾癬の内服薬はチガソン、シクロスポリン(ネオーラル)、MTX(リウマトレックス)、オテズラ、JAK阻害薬(リンヴォック)の5種類です。抗ヒスタミン薬が使われることもありますが、基本的には無効と考えてください。

5種類いずれの薬剤も中等度以上の乾癬に優れた効果を発揮します。これら5種類の内服薬はいずれも優れた薬剤ではあるものの、安全性と効果の面で生物学的製剤に遠くおよびません。一覧表にまとめました。

乾癬の内服薬の一覧

内服薬 オテズラ シクロスポリン
ネオーラル
MTX
リウマトレックス
JAK阻害薬
リンヴォック
チガソン
長所 ・優れた効果
・長期安全性が高い
・関節症状にも有効
・優れた効果
・効果発現が速い
・優れた効果
・関節症状に有効
・最も安価である
・毎日内服する手間が不要
・優れた効果
・安全性が高い
・関節症状にも有効
・優れた効果
短所 ・消化器症状の副作用あり
・値段が高い
・腎機能障害などの副作用あり
・長期安全性に問題あり
・値段が高い
・肝障害・間質性肺炎などの副作用あり
・定期的なチェックが必要
・最も値段が高い ・肝障害・間質性肺炎の副作用あり
・値段が高い
・男性は6カ月、女性は2年間の避妊が必須
値段 約17,800円
※先発品のみ、後発品はなし
・先発品5,700円~17,000円程度
・後発品3,300円~10,000円程度
・先発品500円~1,000円程度
・後発品330円~660円程度
約44,700円
※先発品のみ、後発品はなし
・先発品5,000円~10000円程度

※値段は1ヵ月30日分の3割負担額。値段は投与量によって大きく変わり、高容量または低用量の場合、表示の範囲外になることもあります。値段を比較するとMTXが非常に安価であることが一目瞭然です。

MTXの有用性~他剤との比較

MTXは中等度~重症の乾癬に対して大変有用な薬剤です。MTXが乾癬の治療薬として日本で使われるようになったのはここ数年のことです。ほぼ同時期にオテズラが発売開始された影響もあるのか、あるいは生物学的製剤の注目度が高いためか、皮膚科診療ではMTXの使用経験は少ないのが実情です。MTXの歴史は古く、かつては重篤な副作用があり、肝生検を行わなければならないと考えられていました。ところが、現在では副作用に注意していれば安全に使える薬剤であることが知られるようになり、関節リウマチの第一選択薬として、また欧米では乾癬の治療薬として広く使われています。

怖い薬というイメージがあるものの、最も重篤な副作用である間質性肺炎はまれで、頻度の高い副作用は肝障害です。また安全面はシクロスポリンの方がやや良いとの報告があるものの、シクロスポリンの長期内服はリスクを伴います。実際に、アトピー性皮膚炎に投与する場合には12週間以内で休薬することが定められており、海外の報告を参照しても乾癬に対する投与期間は最長2年以内がひとつの目安になります。一方で、MTXにはこうした制限がなく、weekly製剤ですから毎日内服する煩わしさもありません。シクロスポリンは値段が高いうえに腎障害の副作用があり、たとえ採血で異常がみられなかったとしても注意が必要です。MTXの最大の利点は関節症状に有効であること、値段が安いという点です。乾癬における最新の総説論文(文献2)によればオテズラ60mgとMTX16mg/weekの皮疹改善率ほぼ同等であることが示されており、費用対効果の高さがうかがえます。関節症状があると、やがて不可逆的な関節破壊を起こすこともあるため、早期に積極的な治療を行うことが望まれます。その場合、生物学的製剤が最も推奨されますが、費用の問題があるなら次善の策としてMTXが有力と考えられます。

(文献2)Griffiths CEM al: Psoriasis. Lancet 2021;397:1301–15.

治療法4 生物学的製剤

乾癬の病態に大きな影響を及ぼしている原因物質をターゲットとした治療法です。2022年4月現在で11種類の生物学的製剤を使うことが可能になりました。TNF製剤、IL-23製剤、IL-17製剤の3タイプにわけられます。投与間隔は製剤によって大きく異なります。短いもので2週間毎、長いもので3カ月毎の投与になります。

効果・安全性の面では生物学的製剤が最も優れており、他のどんな治療法もおよびません。皮疹完全消失率が60%を超える製剤もあり、驚異的な効果があります。最大の欠点は値段が高いこと、使える施設が限られているということです。非常に高価な薬剤ですので、3割負担ではなく、高額医療制度の適応になることがほとんどですが、それなりの費用負担は生じます。負担額は年齢や収入、その他の条件によって大きく異なります。費用負担の問題がなければ、中等度~重症の乾癬(特に関節症状を伴う場合)には生物学的製剤が最も推奨されます。重症乾癬は内服や外用薬だけでは限界があります。

当院は日本皮膚科学会の承認施設であり、生物学的製剤での治療が可能です。重症乾癬の患者さんの治療のお役に立てることができれば幸いです。

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)について

掌蹠膿疱症とは?

掌蹠膿疱症は手掌と足底に水疱・膿疱が繰り返し出現する皮膚疾患です。喫煙歴のある女性に多いのが特徴です。女性では過去の喫煙量(喫煙本数×喫煙年数)が皮膚の重症度と強く相関することが報告されています(文献1)。つまり、喫煙量が多ければ多いほど重症度が高くなる傾向があるということです。

軽症であれば外用薬のみの治療でよいこともありますが、中等度以上の掌蹠膿疱症の治療は簡単ではありません。当院ではまずは標準的な治療法を提案し、皮疹重症度スコア(PPPASI)をつけなら経過を見ていきます。スコアをつけることで治療効果を客観的に判定することが望ましいと考えています。

(文献1)Kobayashi K et al. Cigarette smoke underlies the pathogenesis of palmoplantar pustulosis via an IL-17A-induced production of IL-36γ in tonsillar epithelial cells. J Invest Dermatol 2021;141:1533–41.e4.

もっと詳しく

掌蹠膿疱症は乾癬の類縁疾患と考えられていますが、最大の違いは病巣感染との関連性が指摘されていることです。掌蹠膿疱症には診療ガイドラインが存在せず、統一された治療が行われてきませんでした。しかし、日本皮膚科学会雑誌から「掌蹠膿疱症診療の手引き2022」が公表されました。手引きでは推奨度Aの治療法はなく、推奨度B(行うよう勧められる)の治療法として、禁煙、病巣感染治療、外用治療などが挙げられています。古くから行われてきたビオチン内服療法は推奨度C1となっています(行うことを考慮してもよいが十分な根拠がない)。総説論文でも有効性はあきらかではないと記載されています(文献2)。また、ビオチン療法には保険適応がありません。また近年、金属アレルギーとの関連性は低いことがわかってきており(文献3)、歯科金属除去は推奨度C1となっています。当院では金属パッチテストは積極的には行っておりません。

掌蹠膿疱症の治療方法

掌蹠膿疱症の治療法をまとめてピラミッド状に図示しました。土台となるのが外用療法です。同時に禁煙や病巣感染治療が重要です。これらは初期段階から取り組むことが望ましく、土台部分から連続する形で示しています。病巣感染治療とは具体的には虫歯を含む歯性病巣治療や扁桃摘出のことを指します。なぜそれが有効なのか詳細なメカニズムはあまりよくわかっていません。病巣感染治療を行う場合には、耳鼻咽喉科や歯科口腔外科との連携が必要になります。しかし、病巣感染治療をしても、なかなか改善しないケースも珍しくはありません。

2018年、既存の治療で効果不十分の掌蹠膿疱症に対してトレムフィアが承認されました。乾癬に適応を有する生物学的製剤でインターロイキン23を抑える注射製剤です。現在、掌蹠膿疱症に保険適応を有する生物学的製剤はトレムフィア1剤のみでピラミッドの頂点に位置します。乾癬では非常に高い効果が得られる製剤ですが、日本人を対象とした1.5年間のデータを見る限り、掌蹠膿疱症では乾癬ほどの高い治療効果は得られないようです(文献4)。また、乾癬治療の項目でも述べたように非常に高額な薬剤ですので治療費の負担が問題になることが多いです。

(文献2)Yamamoto T. Clinical Characteristics of Japanese Patients with Palmoplantar Pustulosis. Clin Drug Investig. 2019;39:241-252.
(文献3)Masui Y et al. Dental metal allergy is not the main cause of palmoplantar pustulosis. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2019;33:e180-e181.
(文献4)Okubo Y et al. Sustained efficacy and safety of guselkumab in patients with palmoplantar pustulosis through 1.5 years in a randomized phase 3 study. J Dermatol. 2021;48:1838-1853