難治性ニキビ/酒さ治療(自由診療)

難治性ニキビ治療薬イソトレチノイン

イソトレチノインはスイスの製薬会社ロシュが開発したもので、炎症をともなう重症ニキビ(難治性ニキビ)に対して非常に高い効果があります。ニキビは白人の方が重症化しやすく、海外では古くから重症ニキビ治療薬の第一選択として使われています。イソトレチノインの商品名としてアキュテイン、ロアキュテイン、ロアキュタン、アクネトレントなどがあります。

イソトレチノインは皮脂の分泌を抑制し、皮脂腺を小さくさせる効果があります。治療効果の高さに加え、再発率が低いという特徴があります(1日1回の内服で治療期間は約6ヶ月間で終了します。大半の方は6ヶ月間でニキビがほぼゼロになります。その後の再発率は3割程度と報告されています)。また背中や胸のニキビに対しても優れた効果を発揮します。医療に絶対などということはありませんが、難治性ニキビに対してほぼ確実に効果があります。2008年以前の日本ではビタミン剤や抗菌薬が中心で、世界標準からかけ離れた治療が行われてきました。アダパレンや過酸化ベンゾイル(ベピオ)が承認され、近年ようやく世界標準に追いついてきましたが、まだまだ遅れています。難治性ニキビは経口イソトレチノインで治療するのが世界のスタンダードです。

当院ではイソトレチノインを最終手段と考えるのではなく、早期治療の選択肢としてお勧めしています。その理由は以下の3点です。

  1. ニキビを繰り返すことで仕事や学業に専念できないなどといった社会的損失は、決して小さくはないことが明らかにされている。
  2. 保険治療で何年もニキビの再発に悩まされるくらいなら、多少の費用がかかっても短期間でサッサと完治させた方が良い。
  3. 長年ニキビが続くと瘢痕が形成されることがあり、瘢痕の治療は非常に難しく、費用も時間もかかる。イソトレチノインの早期導入により瘢痕を予防することができる。

新生ニキビを繰り返す状態では新たにニキビ跡や赤みが生じる可能性があり、永久に肌がきれいにならない悪循環が続いてしまいます。まずはイソトレチノインでニキビを完治させることを目指しましょう。当院では最も信頼性が高いとされるイタリアRecordati社製アクネトレントを採用しています。日本では保険適用がないため費用はかかりますが、それだけの価値は十分にあります。

治療の流れ

ニキビの最高の治療法は間違いなくイソトレチノイン内服です。
従来の保険治療ではニキビは必ず再発します。当院では軽度~中等度であっても(重症でなくても)希望があれば積極的に治療しています。「保険治療で効果不十分の場合に限る」「重症でなければ処方できない」という考えではありません。自由診療のメリットを最大限活用するのが良いです。

当院では最大限の効果をあげるための使用法を提示し、再発率をできるだけ低くすることを目指します。また重症ニキビの患者さんは粉瘤やケロイドを併発していることも多く、当院で外科的切除を行うことも可能ですし、熟練した形成外科医をご紹介することもできます(保険適応あり)。

イソトレチノインの治療費

  • イタリアRecordati社製アクネトレント
イソトレチノイン20mg 30日分20,900円(税込)
イソトレチノイン30mg 30日分31,350円(税込)
イソトレチノイン40mg 30日分41,800円(税込)

体重や重症度にもよりますが、初期量(標準量)として女性20mg男性30mgで開始することをお勧めします。効果不十分の場合は増量を検討することがありますが、最重症かつ体重70kg以上の方は40mg必要と考えられます。

  • ニキビ後の赤み治療(インドNaiom社製)

※新生ニキビがほとんど出なくなってから行う治療です。

トレチノイン0.05% 20g2,200円(税込)
トレチノイン0.1% 20g2,530円(税込)
ハイドロキノン4% 20g2,750円(税込)

【使用方法】洗顔後にトレチノインをニキビ後の赤みに少量薄く塗り、3~5分後にハイドロキノンをひと回り広く重ね塗りしてください。トレチノインはニキビ後の赤みを早く消す効果があります。日中はSPF30以上のUVカット下地を塗り、その後にメイクしていただいて結構です。

【注意点】トレチノイン外用で肌のターンオーバーが早くなると、古い角質がポロポロ剥がれ落ちます。肌が刺激を感じやすくなり、痒み・赤み・乾燥症状が起こることがあります(レチノイド反応)。1カ月程度で徐々に回復することがほとんどですが反応が強すぎる/反応がない場合はご相談ください。トレチノインは冷蔵庫保管が望ましいです。

これ以外に下記診察料を申し受けます。予めご了承ください。

初診料3,300円(税込)
再診料1,100円(税込)
血液検査3,300円(税込)

※各種クレジットカードがご利用いただけます。
※費用その他の問題でイソトレチノイン治療が難しい方にはスピロノラクトンを提案します。詳細は下記をご参照ください。

イソトレチノイン内服治療を受けることができない方

  • 妊娠中の方胎児に異常が出る可能性が報告されています)
    ※男女ともに内服中および内服終了後1ヵ月間の避妊が必要です。また内服中および内服終了後1ヵ月は献血できません。
  • 現在授乳中の方
  • 成長期の方(15歳以下)※12歳以上でも可能だが要相談
  • テトラサイクリン(抗生物質)で治療を受けている場合
  • ピーナッツや大豆にアレルギーがある方
  • 心疾患や肝機能障害のある方
  • 中性脂肪、コレステロールの高い方(脂質異常がある方)
  • ビタミンA過剰症の方
  • イソトレチノインを個人輸入している・オンライン診療を受けている場合

※医薬品の個人輸入は深刻な健康被害をもたらす危険性があります。日本語の通販サイトであっても会社の拠点は海外にあり、偽造薬が流通していることもあるからです。当院では個人輸入やオンライン診療で生じた副作用その他の問題に関しての診察・相談をお受けすることはできません。

※うつ病などの精神疾患があっても当院では治療可能です。詳細は診察時にご相談ください。

イソトレチノインの主な副作用と対応方法

妊娠中の女性は使用できません。胎児に深刻な害を及ぼす可能性があるからです。
その他、皮膚や粘膜の乾燥症状(特に唇の乾燥)の頻度が高いことが知られています。
保湿剤やワセリン、点眼液などで対応可能です。あらかじめドラッグストアで購入しておきましょう。

重症ニキビ治療薬 スピロノラクトン

当院ではイソトレチノイン以外にスピロノラクトンによるホルモン治療も行っています。作用メカニズムの観点から女性のみ対象となりますのでご注意ください。スピロノラクトンは利尿薬や心不全治療薬として使われる薬剤ですが、抗アンドロゲン作用があり男性ホルモンを抑え、ニキビに対して高い有効性があることが知られています。イソトレチノインほどではありませんが、通常の保険治療よりも強力な治療効果が期待できます。また安全性が高く、イソトレチノインよりも治療費を抑えることができます。デメリットとして効果が現れるまで多少時間がかかり、中止後は再発しやすいことです。内服4カ月(早ければ1~2カ月)で徐々に効果が現れ、1年後の有効率は95%以上です。

初期量として1日100~200mgで開始し、効果判定しながら徐々に減量します。費用を抑えつつも即効性と高い有効性を狙うなら、最初の1~2カ月間はイソトレチノインを内服し、その後はスピロノラクトン少量内服に切り替えてメンテナンスを図るという方法もあります。別の方法としてイソトレチノインを5~6ヵ月内服して寛解状態を得てから、再発予防目的にスピロノラクトンを少量で数カ月~2年程度内服するのも悪くはありません。

スピロノラクトンの治療費

スピロノラクトン25mg 100錠5,500円(税込)

これ以外にかかる費用として
初診料 3,300円(税込)、再診料 1,100円(税込)
※各種クレジットカードがご利用いただけます。
※妊娠中の投与に関する安全性は確立していません。

スピロノラクトンの主な副作用

本来は高血圧の薬で大きな副作用はありません。通常は高血圧のある高齢者に投与する薬剤であり、これを成人女性のニキビ治療に使用するため、特有の注意点があります。

一番注意すべきなのは生理不順や不正出血が生じることがあることです。その場合、低用量ピルを併用して規則正しい生理周期に誘導することが推奨されます。当院でピル処方はしておりません。まれですが内服量が多いと排卵を抑制することもあるため、必ず服薬指導を守るようにしてください。

なお、電解質異常や急性腎不全も副作用としてあげられていますが、実際には持病がなく、ニキビを生じるような若い方にそのような症状が生じることはほとんどありません。もし口喝が生じたりしたら、水分摂取を習慣づけてもらえば十分です。

重症ニキビと難治性ニキビは異なる

ほぼ同じだと思われがちですが、よく考えてみると両者は異なることに気がつきます。重症ニキビに対してベピオゲルやデュアックゲルなどの標準治療を適切に行えば、それなりの効果が得られ、やがて軽度~中等度の症状に落ち着きます。しかし、そこからなかなか良くならず治療が長期におよぶ場合があります。つまり症状は軽度~中等度であるが、難治性のニキビというわけです。そのようなケースではやはりイソトレチノイン内服が推奨されます。重症でなければ適応外などという保険診療にありがちな処方制限がないのが自由診療のメリットです。

中等度のニキビ患者638名にイソトレチノインを1日20mg(低用量)投与したところ、12~20歳の患者で94.8%、21~35歳の患者で92.6%が良好な結果が得られたと報告されています(文献1)。重症ニキビはもちろん、中等度ニキビにも優れた効果を発揮します。中等度ニキビに対するイソトレチノイン低用量での内服治療は、患者満足度が高く、かつ副作用の少ない最適な治療法であると報告されています(文献2)。ただし低用量だと再発率が高くなるという意見もあるため注意深い経過観察が必要です。

難治性のニキビは単に皮膚だけの問題ではなく、ホルモンバランスや皮脂腺などをはじめとする体の内側の問題が大きいです。外用薬やピーリング、レーザー治療など外側からのアプローチだけではニキビの再発を抑えるのが難しいこともあります。米国ガイドラインでも中等度以上のニキビには内服治療が推奨されています。イソトレチノインは皮脂腺のアポトーシス(細胞死)を誘導させることが報告されており(文献3)、再発率が低くなる理由の1つと考えられます。したがって軽度~中等度であるが再発を繰り返す難治性ニキビに対して非常に有効性の高い治療と言えるでしょう。最近では中等度のニキビに対しても最初からイソトレチノインを使うのが世界的な潮流になっています。

Key Points

①中等度ニキビに対してもイソトレチノインは有用である

②中等度ニキビではイソトレチノインは低用量でも十分な効果が期待できるが、再発率が高くなる可能性がある

(文献1)Amichai B et al. Low-dose isotretinoin in the treatment of acne vulgaris. J Am Acad Dermatol. 2006;54:644-6.

(文献2)Lee JW et al. Effectiveness of conventional, low-dose and intermittent oral isotretinoin in the treatment of acne: a randomized, controlled comparative study. Br J Dermatol. 2011;164:1369-75.

(文献3)Nelson AM et al. 13-cis Retinoic acid induces apoptosis and cell cycle arrest in human SEB-1 sebocytes. J Invest Dermatol. 2006;126:2178-89.

ニキビの再発率を考える

ニキビの再発は非常に悩ましい問題です。初期段階である微小面皰を治療することで再発を抑えることができます。それが可能な薬剤は過酸化ベンゾイルとアダパレンの2つのみです。商品名ではベピオ、ディフェリン、デュアック、エピデュオです。これらの外用薬は診療ガイドラインでも取り上げられているニキビの標準治療薬ですが、外用をやめてしまえば必ず再発してしまいます。実際に何年も皮膚科クリニックに通院しても、ニキビが完治しない患者さんがたくさんいます。

一方でイソトレチノインは皮脂腺を退縮させる作用があるため、再発を抑えることができ、かつ再発しても症状は軽度で済みます。ただし、再発率は文献によってかなりのばらつきがあるためあまり参考になりません(そもそも再発をどのように定義すべきかという問題があります。定義が変われば再発率も変わります)。再発率はイソトレチノインの投与量、投与期間、併用薬の有無、重症度、年齢、性別など様々な要素が関与するため一概には言えませんが、おおむね30%程度と考えておけば良いでしょう。Quéreuxらは再発率が高くなる患者背景として、年齢が若いこと、家族歴があること、胸や背中にもニキビがあることを挙げています(文献1)。これらに該当する場合には投与量を多くすることが望まれます。なお、最新のメタアナリシスによれば再発率を下げるにはイソトレチノインは低用量ではなく、通常量が推奨されています(文献2)。

海外では中等度~重度のニキビに対するイソトレチノインは第一選択として位置づけられおり、世界のスタンダードなのです。すでにお気づきのように日本のニキビ治療は海外に比べて大きく遅れています。当院でイソトレチノインを希望される患者さんの重症度はそれほど高くはない印象です。むしろ中等度で再発率の低い治療を希望される方が多いようです。難治性ニキビはもちろん、治療満足度が低い場合にも有力な選択肢です。当院ではマニュアル通りに処方するのではなく、イソトレチノインの最適な内服量や使用法を提示します。また副作用を軽減させるための対策も説明します。

Key Points

①従来の保険治療におけるニキビの再発率はほぼ100%である

②イソトレチノイン内服治療は再発率が低く、再発しても症状は軽度で済む

③ イソトレチノインは難治性ニキビの世界標準治療薬である

(文献1)Quéreux G et al. Prospective study of risk factors of relapse after treatment of acne with oral isotretinoin. Dermatology. 2006;212:168-76.

(文献2)Al Muqarrab F, Almohssen A. Low-dose oral isotretinoin for the treatment of adult patients with mild-to-moderate acne vulgaris: Systematic review and meta-analysis. Dermatol Ther. 2022;35:e15311.

スピロノラクトンのポジショニング

スピロノラクトンは降圧剤ですが、成人女性のニキビに高い有効性があることが知られています。米国FDAからニキビ治療薬として認可を受けていませんが、中等度以上のニキビに対して海外のガイドラインでも推奨されています。1日50~200mg内服するのが効果的であり、皮脂の分泌を抑える作用もあると報告されています(文献1)。しかし、イソトレチノインに比べて中止後の再発率が高いことからも、皮脂腺の退縮作用があるかどうか明確ではありません。

スピロノラクトンは長期安全性が高い薬ですが、生理不順などの副作用が用量依存性に起こる場合があり、長期継続するには低用量の方が無難です。近年、スピロノラクトン少量内服とベピオを併用することで良好な結果が得られたと報告されています(文献2)。別の見方をすれば、ベピオやデュアックゲルなどで効果不十分な場合でも、スピロノラクトンを少量追加することで良好な結果が得られる可能性があります。

また中等度以上のニキビに対してミノサイクリン(ミノマイシン)などの抗生剤内服が行われることがありますが、スピロノラクトンと抗生剤内服はほぼ同等の治療成績であることが報告されています(文献3)。ただし、抗生剤は炎症のあるニキビには有効ですが、微小面皰には無効であり、また耐性菌を生み出す可能性があるため、診療ガイドラインでも長期使用は推奨されていません。治療を止めれば再発率100%です。したがって抗生剤を不規則かつ長期内服するくらいならスピロノラクトンを長期内服する方がよほど理に適っています。最後にもう1点付け加えておくと、抗生剤はミノサイクリンよりもドキシサイクリンの方が推奨度が高く、当院でも主にドキシサイクリンを処方しています。

Key Points

①スピロノラクトンは成人女性のニキビ治療薬として有効性が高い

② スピロノラクトンは抗生剤内服と同等の効果があるが、耐性菌出現などの問題はなく長期安全性が高い

③ ベピオとの併用でスピロノラクトンは少量内服でも優れた効果を発揮する

(文献1)Goodfellow A, Alaghband-Zadeh J, Carter G, et al. Oral spironolactone improves acne vulgaris and reduces sebum excretion. Br J Dermatol. 1984;111:209-214.

(文献2)Patiyasikunt M et al. Efficacy and tolerability of low-dose spironolactone and topical benzoyl peroxide in adult female acne: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial. J Dermatol. 2020;47:1411-1416.

(文献3)Barbieri JS et al. Frequency of treatment switching for spironolactone compared to oral tetracycline-class antibiotics for women with acne: a retrospective cohort study 2010-2016. J Drugs Dermatol. 2018;17:632-638.

イソトレチノインの効果的な投与方法

重症ニキビに対する最高の治療法はイソトレチノイン内服です。しかし、適切な使用方法を知らないで治療を行うと、有効率が低くなり、再発率も高くなります。最大限の効果を得るための作戦を立てることが重要です。

各国のガイドラインごとに推奨される量に差がありますが、体重に応じて投与量は変わります。例えば欧州ガイドラインでは投与量0.3~0.5mg/kg/day(最重症型では0.5mg/kg/day以上)を推奨しています。一方で米国ガイドラインでは最初の1カ月間は0.5mg/kg/day以下で開始し、その後は最大1mg/kg/dayまで増量することを推奨しています(体重60kgの場合、0.5mg/kg/dayで計算すると投与量は1日30mgになります)。治療期間については欧州ガイドラインでは最低6ヵ月間、Gollnickらは16~24週間以上を推奨しています(文献1)。明確な治療期間を設定するのではなく、ニキビ完全消失後からプラス1ヵ月間の投与が最も合理的とする意見もあります(文献2)。以上より治療期間は状況次第と考えてよいと思われますが、添付文書には6ヵ月間と記載されています。また内服開始後の一時的な増悪(フレア)予防のため、初期開始量を0.2mg/kg/day以下に抑えることを推奨する意見もあります(文献3)。

トータルの投与量について米国ガイドラインでは120~150mg/kgを推奨しています。この量になると十分な効果が得られるというのがその根拠です。前述のように体重60kgで1日30mg内服するならば120mg/kgを達成するには240日(8ヵ月)かかるという計算になります。一方で欧州ガイドラインでは累積投与量に関しては根拠がないとしています。他国のガイドラインに比べ米国ガイドラインではより高用量を推奨している印象です。また欧米人に比べ、日本人では投与量は少なくても良いとする意見もあるようですが、明確な根拠はありません。各国のガイドラインにややばらつきがあるのは重症ニキビの分類基準が異なることが1つの要因と考えられます。

最後に投与のタイミングです。空腹時に内服すると吸収率が落ちるため、必ず食後に内服することです。内服2~4時間後に血中濃度が最大となり、ミルク・バター・チーズなど脂質を含む食事を取ることで吸収率が1.5~2倍に高まることが報告されています(文献4)。また内服方法は1日1回が良いのか2回にわけて内服するのが良いのか海外のどのガイドラインでも結論が出ていません。

Key Points

①初期投与量0.5mg/kg/day以下で開始し、状況に応じて増量を検討する

②脂質を含む食事のあとに内服することで吸収率を高めることができる

(文献1)Gollnick HP et al. A consensus-based practical and daily guide for the treatment of acne patients. J Eur Acad Dermatol Venereol 2016;30:1480-1490.

(文献2)Thiboutot DM et al. Practical management of acne for clinicians: an international consensus from the Global Alliance to Improve Outcomes in Acne. J Am Acad Dermatol 2018;78(2 Suppl 1):S1-S23.e21.

(文献3)Borghi A et al. Acute acne flare following isotretinoin administration: potential protective role of low starting dose. Dermatology. 2009;218:178-80.

(文献4)Colburn WA et al. Food increases the bioavailability of isotretinoin. J Clin Pharmacol. 1983;23:534-9.

うつ病があるとイソトレチノイン内服はできないのか?

1982年~2000年までの間にイソトレチノイン内服治療を受けた患者で431例のうつ病、自殺/自殺企図/自殺念慮があったことを米国FDAが報告しました(文献1)。このうち実際の自殺者は37名(男性31名、女性6名)、年齢の中央値17歳で若い男性に多かったことが報告されています。米国FDAは警告を発し、1998年より添付文書に精神疾患がある場合は慎重に投与すべきと記載されるようになりました。しかし、イソトレチノイン内服治療と精神疾患との因果関係は不明な点が多く、今日まで多くの論争があります。

海外の研究では思春期の重症ニキビはメンタルに悪影響を及ぼし、生活の質を著しく低下させ、自殺念慮を引き起こす頻度が男性で3倍以上、女性で2倍以上になると報告されました(文献2)。しかし、近年のメタ解析ではイソトレチノイン内服治療によってうつ症状が著明に改善され、うつ病のリスク増加と関連しないことが示されました(文献3)。また、台湾においてイソトレチノイン内服治療患者29,943名を調査したところ、治療期間が長期に及んだり投与量が多くなっても、精神障害を起こすリスクは上昇しなかったと報告されました(文献4)。同じアジア人での研究結果は重要な意味を持つと考えられます。

さらに2023年の最新の世界的なコホート研究でも自殺やうつ病のリスクを上昇させないことが報告されました(文献5)。この研究ではイソトレチノイン内服群と抗生剤内服群とを比較し、カプランマイヤー曲線を用いてイソトレチノインを内服した方が自殺率が低くなることが証明されました。ただし、この論文にはいくつかの批判もあります。例えば両群の患者背景(特に精神疾患の重症度)が異なることや観察期間が長すぎるなどバイアスがあると指摘されています(文献6)。これに対してKridinらは、重症ニキビ患者はもともと精神疾患を抱えるリスクが高く、むしろイソトレチノインの安全性を過小評価していると反論しています。また2024年の最新のメタ解析でもイソトレチノインは自殺や精神疾患のリスクを高めることはなく、むしろ治療後2~4年で自殺企図のリスクが低くなると結論づけられています(文献7)。

Key Points

①重症/難治性ニキビがうつ症状を増悪させるという報告があり、イソトレチノイン内服治療によりうつ症状が改善する可能性がある

②近年の研究論文によればイソトレチノイン内服治療によって精神疾患のリスクは上昇しないという見解がほとんどである

(文献1)Wysowski DK et al. Depression and suicide in patients treated with isotretinoin. N Engl J Med. 2001;344:460.

(文献2)Halvorsen JA et al. Suicidal ideation, mental health problems, and social impairment are increased in adolescents with acne: a population-based study. J Invest Dermatol. 2011;131:363-70.

(文献3)Huang YC, Cheng YC. Isotretinoin treatment for acne and risk of depression: A systematic review and meta-analysis. J Am Acad Dermatol. 2017;76:1068-1076.e9.

(文献4)Chen YH et al. Risk of psychiatric disorders in patients taking isotretinoin: A nationwide, population-based, cohort study in Taiwan. J Affect Disord. 2022;296:277-282.

(文献5)Kridin K, Ludwig RJ. Isotretinoin and the risk of psychiatric disturbances: A global study shedding new light on a debatable story. J Am Acad Dermatol. 2023;88:388-394.

(文献6)Loh CH et al. Interpreting with caution of the lack of association between isotretinoin, depression, and suicide. J Am Acad Dermatol. 2023;89:e213-e214.
(文献7)Tan NKW et al. Risk of Suicide and Psychiatric Disorders Among Isotretinoin Users: A Meta-Analysis. JAMA Dermatol. 2024;160:54-62.

イソトレチノインの副作用

イソトレチノインは欧米では古くから難治性の重症ニキビに対して使われてきました。

イソトレチノインが初めて認可された1983年当時は副作用のチェックのために定期的な血液検査が推奨されていました。現在においても欧州ガイドラインでは治療前、1ヵ月後、3ヵ月後の採血、米国ガイドラインでも脂質異常と肝機能障害のチェックが推奨されています。しかし、副作用の頻度は実際には低いことがあきらかとなってきており、毎月の血液検査までは不要であると報告されました(文献1)。さらに2022年、アメリカとイギリスの研究チームは125本の研究論文をレビューした結果、報告された有害事象は非常にまれであり、健康な若年者ではイソトレチノイン経口投与時の臨床検査モニタリングは不要であると結論づけました(文献2)。副作用チェック目的の採血が有益であることを支持するエビデンスはないとしています。ただし、論文の最後に「この考え方は修正が必要になる可能性はある」と述べています。

イソトレチノインの添付文書を見ると数多くの副作用の可能性があげられています。その中で最も注意すべきことは、流産のリスク上昇や胎児への催奇形性があることです。献血ができないのも妊婦に輸血されるリスクがあるためです。添付文書には内服中および内服後1ヵ月間避妊することと記載されていますが、実際には安全性のマージンを取って内服後6ヵ月間空けるよう推奨している施設が多いようです。その他、頻度が高い副作用としては皮膚や口唇および目・口・粘膜の乾燥です。特に口唇の乾燥はほぼ100%近く現れるため、プロペト(ワセリン)などの保湿剤をあらかじめ準備しておきましょう。

Key Points

①イソトレチノイン治療では頻回の採血検査の必要性は否定されている

②特に注意すべきなのは「男女とも避妊が必須」「献血は不可」以上2点である

(文献1)Lee YH et al. Laboratory Monitoring During Isotretinoin Therapy for Acne: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Dermatol. 2016;152:35-44.

(文献2)Affleck A et al. Is routine laboratory testing in healthy young patients taking isotretinoin necessary: a critically appraised topic. Br J Dermatol. 2022;187:857-865.

酒さの病型分類

酒さは顔面の炎症が慢性的に続く病気です。顔の赤み、ブツブツ、ボコボコした鼻など多彩な臨床像を呈します。「赤ら顔=酒さ」というわけではありません。皮膚科専門医であっても酒さは診断が難しく、かつ治療も難しい厄介な疾患です。保険診療だけでは限界があり、当院では自由診療を積極的に取り入れています(注;特に申し出がない限り、保険診療のみ行います)。

保険診療ではロゼックスゲルが第一選択です。ロゼックス(抗菌薬)で満足のいく結果が得られれば当院の自由診療は必要ないと考えます。なお、ホームページの内容を読んでいない方に自由診療は行いませんのでご注意ください(すべて理解いただく必要はなく、治療法や費用だけでも事前にご確認ください)。自由診療で価値が高いものはミルバソゲル、イベルメクチン、アゼライン酸、イソトレチノイン、レーザー治療です。また、スキンケアに関しては低刺激性のものをお勧めしますが、こうすれば必ず上手くいくというものはなく、試行錯誤を重ねながらご自身にあう方法を探すしかないのが実情です。

顔面しゅさは主に4つに分類されますが、ここでは3つの分類を紹介します。

  • 第1度酒さ(紅斑毛細血管拡張型)
    ほほの赤みがメインで難治性。ミルバソゲルが非常に有効。アゼライン酸、ロゼックス、イベルメクチンの効果は限定的とれさる。難治例にはイソトレチノイン内服を考慮してもよい。第2度酒さと混在している場合がある。
  • 第2度酒さ(丘疹膿疱型酒さ)
    口周や顎回りのブツブツ。イベルメクチンが第一選択。アゼライン酸と併用すると非常に効果的。難治例にはイソトレチノイン内服が推奨される
  • 第3度酒さ(瘤腫型・鼻瘤型)
    鼻の皮膚が厚くなりボコボコした状態(ミカンの皮状)。治療法は個々の症例に応じて柔軟に変える必要あり

自由診療では薬剤費以外にも下記診察料を申し受けます。予めご了承ください。

初診料3,300円(税込)
再診料1,100円(税込)
血液検査3,300円(税込)

※各種クレジットカードがご利用いただけます。
※最終受診日から1年(365日)をすぎると初診扱いとなります。

酒さの治療費

以下の未承認薬および適応外処方は医薬品副作用被害救済制度の対象外となることを予めご了承ください。

ミルバソゲル(後発品)15g
Akumentis Healthcare社製(インド)
5,500円(税込)

第1度酒さ(紅斑拡張型)にほぼ確実に効果があります。α2受容体作動薬として血管収縮作用があり、欧米では広く使用されています。飲酒や気温差による突然の赤みを抑えるのは不可能だと思われがちですが、ミルバソゲルが非常に効果的です。即効性があり、外用後わずか30分程度で効果が現れはじめ、12時間程度効果が持続します。根本的な治療薬ではありませんが、長期安全性も確立されており、海外のガイドラインでも推奨されています。詳細は「ミルバソゲルの有用性」の記事を一読ください。

(使い方)1日1回、洗顔後に顔全体に薄く塗布
※開封時にチューブ出口のフィルムが残存する場合があります。ハサミ等でフィルムを除去してください

イベルメクチンクリーム30g 1本4,400円(税込)

ロゼックスで効果不十分/かぶれを起こした場合、まずはイベルメクチンクリームを試してみることをお勧めします。有効性・安全性ともにロゼックスよりも優れており、特に丘疹膿疱型に非常に有効です(文献1)。ロゼックスと異なり、乾燥症状が出ることは少なく1日1回の外用で済むので利便性にも優れています。開始後は多少の刺激感を感じることがあります。妊娠中や授乳中の方への安全性は確立されていません。

(使い方)1日1回、夜の洗顔後、赤み部位に薄く塗布
※開封時にチューブ出口のフィルムが残存する場合があります。ハサミ等でフィルムを除去してください

(文献1)Taieb A et al. Superiority of ivermectin 1% cream over metronidazole 0.75% cream in treating inflammatory lesions of rosacea: a randomized, investigator-blinded trial. Br J Dermatol. 2015;172:1103-10.

イベルメクチン内服薬12mg(1回分)13,200円(税込)

疥癬の治療薬として使われますが、酒さには保険適用がありません。適用外での使用となります。ニキビダニが強く関与する酒さには劇的な効果があり、わずか1回の治療で数カ月間効果が持続するという報告があります。また眼型酒さに対する有効性も報告されています。理論上はイベルメクチンクリームよりも高い効果が期待できますが、エビデンスレベルは高くはありません。副作用は吐き気や下痢などで出現率は1~2割程度と報告されています。また妊娠中や授乳中の方への安全性は確立されていません。詳細は「イベルメクチン内服の有用性」の記事を一読ください。

(使い方)1回12mgを寝る前に内服(※1回限りで完結する治療です)

イソトレチノイン10mg 30日分10,450円(税込)
イソトレチノイン20mg 30日分20,900円(税込)

重症/難治性ニキビ薬として海外では古くから使用されていますが、酒さにも高い有効性があります。日本ではあまり知られていませんが、抗菌薬よりも有効性が高く、難治性酒さの「裏技」といえる治療です。用量・用法はニキビ治療と大きく違いますので、症状に合わせた提案をさせていただきます。詳細について「難治性酒さにはイソトレチノインが有効」の記事を一読ください。

※当院では最も信頼性が高いとされるイタリアRecordati社製アクネトレントを採用しています。
※副作用や注意点等については当院ホームページの「難治性ニキビ治療イソトレチノイン」でご確認ください。

アゼライン酸(AZAクリア)15g2,200円(税込)

小麦や大麦などの穀物類に含まれる天然成分です。酒さに対する有効性は20年以上も前に報告されており、2002年に米国FDAから認可を受けています。マイルドな効果というイメージがありますが、実際にはロゼックスよりも治療効果が高いことが報告されています。強固なエビデンスではありませんが、近年のネットワークメタ解析によればイベルメクチンよりも有効性が高いとされるほどです(文献2)。外用直後にヒリヒリ感など一過性の刺激が生じることがありますが、安全性が高く、妊娠中や授乳中の使用も可能です。

(文献2)Shaheen EA et al. The efficacy and safety of minocycline, metronidazole, ivermectin, and azelaic acid in moderate-to-severe papulopustular rosacea: A systematic review and network meta-analysis. JAAD Int. 2024;20:23-30.

VビームⅡ 顔(酒さ病変部)
1回
25,300円(税込)

※施術者は院長のみ。原則として初診日には行いません。

赤みの原因となっている血管をターゲットとした治療法です。酒さの赤みには様々なレーザー治療が行われます。固定化された毛細血管拡張症に対してはVビームが最高峰の治療の1つと言われています。ただし、適応を見極める必要があり、闇雲にレーザーを当てても意味がありません。「レーザー治療(Vビーム)の限界」の記事を一読ください。個人差はありますが2~4週間おきの治療を数回行うと効果が実感できます。副作用は腫れや皮下出血(紫斑)が出ることです。通常は数日で治まりますが、イベント前などは避けておきましょう。

混合診療

ロゼックスゲル15g 1本2,200円(税込)
ミノマイシン錠 50mg 100錠3,300円(税込)
ビブラマイシン錠50mg 100錠3,300円(税込)

顔面しゅさの自由診療を受ける場合、同日(正確には同月)にロゼックスゲルを保険診療として処方することはできません(混合診療に該当するため)。自由診療とロゼックスの併用を希望される場合、上記価格で提供します(参考;ロゼックスゲルは保険診療の3割負担だと1本15gで約460円です)。また、ミノマイシンやビブラマイシンの併用についても同様の理由で保険診療として処方することはできません。当院では米国ファイザー社製の先発品を取り扱っています。上記薬剤費に加え、所定の診察料がかかります。

難治性酒さにはイソトレチノインが有効

イソトレチノインは難治性ニキビの治療薬ですが、実際には他の皮膚疾患に対しても有効性が報告されており、酒さにも有効であることが知られています。メカニズムとして、免疫調整作用、抗炎症作用、抗血管新生作用などが関連していると考えられています。

酒さはイベルメクチンをはじめとする抗菌薬の使用だけでは治療抵抗性であり、経口イソトレチノインの必要性がクローズアップされています(文献1)。酒さに対してはニキビ治療よりも少ない量で十分な効果が得られます。ドキシサイクリン(ビブラマイシン®)と経口イソトレチノイン0.3mg/kg/dayとの比較では後者の優位性が報告されています(文献2)。また別の研究ではイソトレチノイン20mg週1回投与群28名とミノサイクリン100mg投与群24名で4~7ヶ月間で治療成績がほぼ同等だったと報告されています(文献3)。さらに同研究では重症酒さ24名に対してイソトレチノイン40mg週1回投与したところ、完全奏効62.5%(部分奏功29.2%)だったと報告しています。

2025年の最新のメタ解析の結果、低用量イソトレチノイン内服は中等度~重度および難治性酒さに対して忍容性に優れ、安全で有効な治療法と報告されました(文献4)。病変数と紅斑が有意に減少し、抗菌薬よりも優れていることが示されました。内服中止後も効果は16週間持続し、5.5ヶ月時点で再発率35%と報告されました。

酒さに対する経口イソトレチノインの標準化されたプロトコルはないため、個々の症例に応じて投与量を決めることになります。また維持療法としての使い方は今後の研究課題とされています。英国ガイドラインでは0.25mg/kg/dayの低用量を提案しており、難治性ニキビ治療で推奨されている0.5mg/kg/dayの半分の投与量です。当院では初期量1日20mgで開始し、症状にあわせて減量を提案していきます。なお、イソトレチノインと上記の抗菌薬は併用することはできません。

Key Points

①難治性酒さに対する経口イソトレチノインの有効性と安全性が報告されている

②低用量でも抗菌薬内服と同等かそれ以上の効果が期待できる

③内服中止後も4~5カ月間程度は効果が持続する

(文献1)Desai S, Friedman A. Isotretinoin for rosacea: A systematic review. JAAD Int. 2024;16:112-118.
(文献2)Gollnick H et al. Systemic isotretinoin in the treatment of rosacea – doxycycline- and placebo-controlled, randomized clinical study. J Dtsch Dermatol Ges. 2010;8:505-15.
(文献3)Shemer A et al. Low-dose isotretinoin versus minocycline in the treatment of rosacea. Dermatol Ther. 2021;34:e14986.
(文献4)King A et al. Low-dose isotretinoin for the management of rosacea: A systematic review and meta-analysis. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2025;39:785-792.

ミルバソゲルの有用性

ミルバソゲル(ブリモニジン)はα2受容体作動薬として血管を収縮させる作用があります。即効性があるのが特徴で寒暖差や飲酒などによる赤みに優れた効果を発揮します。日本では保険適用はありませんが、米国FDAの承認薬であり、海外のガイドラインで「強く推奨」されている世界標準治療薬です。

1日1回洗顔後に塗布してください。外用後20~30分で効果が現れ始め、3~6時間でピークに達し、8~12時間程度効果が持続します。気になるところだけに部分使いする方法でも構いませんが、顔全体またはやや広めに外用することをお勧めします。理由として、例えばほほのみに外用した場合、ほほだけが「白抜け」したような状態になる可能性があり、見た目が不自然になることがあるからです。実際にミルバソゲル塗布部位の周辺部の赤みが強くなるケースが報告されています(文献1)。詳細なメカニズムは不明ですが、ミルバソゲルによって慢性的な血管収縮が起こり、周辺部皮膚において代償性の血管拡張をきたす可能性が想定されています。例えば川の流れをせき止めようと障害物を設置しても、障害物をよけるように水は流れ続ける状態をイメージしてみましょう。簡単に言えば、ミルバソゲルの薬理作用で血管拡張を抑えたとしても、代わりに周りの皮膚の血管拡張が起きてしまうと考えるとわかりやすいと思います。また、ミルバソゲルの効果がなくなってくると、再び血管拡張や灼熱感が「リバウンド現象」として強く表れることがあります(文献2, 3)。もちろんこうした現象は一時的なものです。

上記の副反応が気になるかもしれませんが、突発的な赤みを抑える効果は抜群です。写真撮影や何らかの行事・イベントがある日には重宝するはずです。もちろん毎日使用いただくこともできます。また赤みが改善されることで肝斑やシミが相対的に目立ってしまう可能性もあるため、ご自身にあった使い方を見出すのがよいと思います。

Key Points

①ミルバソゲルは寒暖差や飲酒などによる赤みを抑える効果がある

②即効性に優れているが、リバウンド現象や周囲皮膚に赤みを生じることがある

(文献1)Gillihan R et al. Erythema in Skin Adjacent to Area of Long-term Brimonidine Treatment for Rosacea: A Novel Adverse Reaction. JAMA Dermatol. 2015;151:1136-7.
(文献2)Routt ET, Levitt JO. Rebound erythema and burning sensation from a new topical brimonidine tartrate gel 0.33%. J Am Acad Dermatol. 2014;70:e37-8.
(文献3)Ilkovitch D, Pomerantz RG. Brimonidine effective but may lead to significant rebound erythema. J Am Acad Dermatol. 2014;70:e109-10.

レーザー治療(Vビーム)の限界

第1度酒さにはレーザー治療が有用とされています。レーザー治療を行うにあたり、赤ら顔と毛細血管拡張症は全く別物であることを理解しておく必要があります(「症候名」としての毛細血管拡張と「疾患名」としての毛細血管拡張症は全く別物です)。ところが両者はしばしば混同されることがあり、また混在することがあります。顔の赤みをもたらす皮膚疾患は酒さだけではありません。アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、接触皮膚炎なども顔の赤みを引き起こします。酒さの赤みはヘモグロビンという色素タンパクを反映したもので、一過性に血流が局所的に増加している炎症状態です。多くは遺伝的体質によるものであり、原因をそのままにして血管を破壊するレーザー治療を行っても、時間が経てばどうしても再発してしまいます。

一方で毛細血管拡張症とは、現在炎症がないにもかかわらず、何らかの理由で拡張した毛細血管が回復できない状態を指します。例えば、顔面にステロイド外用薬を長期間使っていると毛細血管拡張症をきたすことがあります。皮膚科外来でよく見かける状態ですがVビームが非常に有効です。しかし、紅斑毛細血管拡張型(第1度酒さ)にレーザー治療を行ってもその効果は限定的です。レーザーは皮膚表面の血管に対する物理的治療であって、体質そのものを改善させるものではないからです。日本皮膚科学会の診療ガイドラインでも推奨度C1(選択肢の1つとして推奨する)となっており推奨度は高くはありません。酒さが増悪する要因は人それぞれですが紫外線や飲酒、温度差などです。確実な治療法は悪くなる要因を1つ1つ除去するしかないことになります。少し残念な話ですが、どんなに医学が進歩しても遺伝的体質を変えることは困難です。

以上をまとめると、炎症のない固定化された毛細血管拡張症はレーザーで治すことはできますが、酒さの病態改善/体質改善にレーザーは役に立ちません。顔面酒さの治療の難しさは、疾患の本質を正しく理解し、現在の病態に基づいた治療選択をしなければならないという点です。

(文献1)尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023. 日皮会誌. 2023;133:407-450.

Key Points

①レーザーは皮膚表面の治療を行うことはできるが体質改善の効果はない

②紅斑毛細血管拡張型(第1度酒さ)は増悪因子を避けることが確実な治療法の1つ

(文献1)尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023. 日皮会誌. 2023;133:407-450.

イベルメクチン内服の有用性

イベルメクチンクリームは酒さの治療薬として2014年米国FDA(2015年EMA)に認可され、海外のガイドラインでも強く推奨されています。外用薬は灼熱感、刺激感、かゆみなどの副作用が問題になることがあります。イベルメクチン内服薬についても近年、有効性が報告されるようになりました。

海外の報告で酒さ45例にイベルメクチン内服薬を1回投与したところ、著明に改善し、15例(33%)で皮疹が完全消失したと報告されました。副作用は吐き気9例、下痢4例、頭痛2例であり、3カ月間の追跡調査において再発はわずか5例(11%)だったと報告されました(文献1)。イベルメクチンを数回にわたって投与したという報告も散見されますが、単回投与(1回限りの投与)で十分な効果が得られるようです。44歳男性の丘疹膿疱型酒さに対し、イベルメクチン単回投与で6ヶ月後も寛解状態が続いた症例(文献2)や、12歳女性の重症の皮膚眼型酒さに対し、イベルメクチン単回投与で症状が完全消失し、2年後も再発がなかった症例などが報告されています(文献3)。

イベルメクチン内服薬は日本では疥癬の治療薬として使われていますが、酒さに対しては適用外使用となります。適応外使用は悪というわけではありませんが、安全性に十分配慮する必要があります。未承認薬および適応外処方は医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。また報告例が少なく、エビデンスレベルは高くはありません。ただし、安全性が高いことが知られており、他の治療法で上手くいかない場合には試してみる価値があるでしょう。

Key Points

①イベルメクチン内服薬は単回投与で優れた効果を示すことが報告されている

②十分なエビデンスは確立されておらず、まずは外用治療が推奨される

(文献1)Sharara, Manal A et al. Efficacy of single-dose oral ivermectin in treatment of rosacea in relation to demodex mites. Egyptian Journal of Dermatology and Venereology 2024;44:192-199.
(文献2)Hernández-Martín Á. Oral Ivermectin to Treat Papulopustular Rosacea in a immunocompetent patient. Actas Dermosifiliogr. 2017;108:685-686.
(文献3)Brown M et al. Severe demodexfolliculorum-associated oculocutaneous rosacea in a girl successfully treated with ivermectin. JAMA Dermatol. 2014;150:61-3.

妊娠中の酒さ治療

酒さで医療機関を受診される方は20~50歳代の女性が多い印象です。妊娠中でも安全に使用できる治療法をご紹介します。安全性のランクを表にまとめました(文献1, 2)。妊娠時リスク分類にはA, B, B1, B2, B3, C, D, Xのカテゴリーに分けられ、数字が大きくなるほど、アルファベットが進むほど、リスクが高いことを示します。内服薬はほとんど使えないため、ロゼックスまたはアゼライン酸が第一選択となります。

妊娠中に急激に症状が悪化することがあり(顔面中央や頬に突然出現)、電撃性酒さ/劇症酒さと呼ばれます。マクロライド系抗菌薬(エリスロマイシン、アジスロマイシンなど)が推奨されます。内服ステロイドを併用する場合もあります(文献3)

薬剤名FDAFASSADEC
メトロニダゾール(ロゼックスゲル)BB1B2
アゼライン酸(AZAクリア)BB1B1
イベルメクチン外用CCB3
イベルメクチン内服CCB3
アジスロマイシン(ジスロマック)BB1B1
エリスロマイシンBDRA
ミノサイクリン(ミノマイシン)DDRD
ドキシサイクリン(ビブラマイシン)DDD
イソトレチノイン(アクネトレント)XDX

酒さ治療薬の胎児へのリスク分類表
米国FDA/スウェーデンの医薬品データベースであるFASSおよびオーストラリア医薬品評価委員会ADECによる医薬品の胎児への安全性に関するリスク分類

Key Points

①外用薬はロゼックスまたはアゼライン酸が推奨される

②アジスロマイシンおよびエリスロマイシンは酒さの第一選択ではないが、内服抗菌薬として安全に使用できる(劇症酒さには第一選択)

(文献1)Murase JE et al. Safety of dermatologic medications in pregnancy and lactation: Part I. Pregnancy. J Am Acad Dermatol. 2014;70:401.e1-14
(文献2)McMullan P et al. Safety of dermatologic medications in pregnancy and lactation: An update – Part I: Pregnancy. J Am Acad Dermatol. 2024;91:619-648.
(文献3)Yao QH, Liu ZH. Rosacea Fulminans in Pregnancy: A Case Report and Review. Clin Cosmet Investig Dermatol. 2024;17:1999-2007.