男性の薄毛(AGA)

男性型脱毛症とは

男性型脱毛症(AGA)は前頭部(髪の生え際)や前頭部(頭の真上)の脱毛が起こるものです。AGAはandrogenetic alopeciaの略称です。ここでandroは男性、geneticは遺伝、alopeciaは脱毛症を意味します。これらを繋げると「男性ホルモンと遺伝が関連した脱毛症」ということになります。

AGAが起こるメカニズムを説明します。まず最初に男性ホルモンであるテストステロンが5-α還元酵素の作用でジヒドロテストステロンに変化します。このジヒドロテストステロンが早期の脱毛を引き起こし、ヘアサイクルが1~2年(通常は5~6年)に短くなります。つまり、太くてしっかりした毛髪が育つ前に脱毛が起きてしまうわけです。それを抑えるのが5-α還元酵素阻害薬(フィナステリド、デュタステリド)です。いずれもAGAの病態メカニズムに基づく理にかなった治療薬ですが、毛髪を増やすというよりも抜け毛を減らす薬剤です。結果としてAGAを発症する以前の状態に戻そうというものです。しかし内服を止めてしまうとゆっくりとAGAが進行してしまいます。2017年の診療ガイドラインで推奨度A(行うよう強く勧める)とされているのはフィナステリド内服、デュタステリド内服、ミノキシジル外用の3つだけです。まずはこれらの治療から開始すると良いでしょう。セルフケアや市販の育毛剤では効果は期待できません。

AGAの治療費

フィナステリド1mg 28錠(国内製)4,400円(税込)
フィナステリド1mg 100錠(海外製)11,000円(税込)

※ホームページの「フィナステリド内服の有用性」の記事を必ず一読ください。
※海外製は価格を抑えるため包装は最低限の簡素な箱で提供しています。

デュタステリド0.5mg 30錠(国内製)5,390円(税込)
デュタステリド0.5mg 30カプセル(国内製5,500円(税込)
デュタステリド0.5mg 100錠(海外製)13,200円(税込)

※ホームページの「デュタステリド内服の有用性」の記事を必ず一読ください。
※海外製は価格を抑えるため包装は最低限の簡素な箱で提供しています。

ミノキシジル外用液5%60mL(国内製)4,950円(税込)
ミノキシジル2.5mg 100錠(海外製)11,000円(税込)

※ミノキシジル内服(海外製)を希望される方はホームページの「ミノキシジル内服の有用性」の記事を必ず一読ください。同意書をダウンロードし、必要事項を記入して来院ください。
※海外製は価格を抑えるため包装は最低限の簡素な箱で提供しています。

初診料3,300円(税込)
再診料1,100円(税込)

※男性型脱毛症(AGA)治療は自由診療であり、診察料も保険適応外となります。
※各種クレジットカードがご利用いただけます。
※最終受診日から12ヵ月(365日)を超えた場合は初診扱いとなります。

ミノキシジル外用薬の有用性

ミノキシジル外用薬(以下TMS: topical minoxidil solution)は男性の薄毛(AGA)の治療薬のゴールドスタンダードです。TMSを除く市販の育毛剤に医学的根拠はありません。ミノキシジルの歴史は古く、1979年に高血圧の内服薬として米国FDAに認可されました。ところが副作用として全身の多毛が認められ、それ以降は発毛剤として転用されるようになりました。

1988年にはAGAに対して2%TMSが開発され、現在5%TMSが性別問わず世界のスタンダードとされています。2025年の最新のレビュー論文には、多くの患者がTMSの有効性を軽視しているケースが多く、正しく外用できていないことや、外用アドヒアランスが低い(規定通り1日2回外用していない)ことを指摘しています(文献1)。当院でも使い始めてはみたものの、効果がないと自己中断してしまうことも多い印象です。しかし、実際に毎日欠かさず外用し、写真を撮って評価をすればかなりの有効性です。68名のAGAを対象とした海外の研究では、ミノキシジル5mg内服群33名と5%TMS外用群35名のランダム化比較試験で24週後の臨床効果に差がなかったことが報告されています(文献2)。少人数試験であり、参考程度にしかなりませんが5%TMSも十分な有効性があるのは確かです。なお、海外製には5%を超える高濃度TMSがありますが、有効性と安全性の検証は不十分です。5%TMSと10%TMSの二重盲検比較試験では、意外にも5%TMSが優位性を示し、皮膚炎などの副作用も少なかったことが報告されています(文献3)。濃度は高ければ高いほど良いわけではなく、TMSの「至適濃度」は5%前後と考えて良いと思われます。

Key Points

①5%TMSは性別問わず薄毛治療の外用薬として強く推奨される

②5%を超える高濃度TMSの有効性と安全性は確立されていない

(文献1)Olsen EA et al. Summation and recommendations for the safe and effective use of topical and oral minoxidil. J Am Acad Dermatol. 2025;93:457-465.
(文献2)Penha MA et al. Oral Minoxidil vs Topical Minoxidil for Male Androgenetic Alopecia: A Randomized Clinical Trial. JAMA Dermatol. 2024;160:600-605.
(文献3)Ghonemy S et al. Efficacy and safety of a new 10% topical minoxidil versus 5% topical minoxidil and placebo in the treatment of male androgenetic alopecia: a trichoscopic evaluation. J Dermatolog Treat. 2021;32:236-241.

ミノキシジル外用の重要ポイント

前回の記事ではミノキシジル外用薬(TMS)の有用性について述べました。しかし、正しく使用できなければ意味がありません。最新のレビュー論文(文献1)を参考に外用のポイントをまとめました。使用上の注意点は動画で確認をお願いします(外箱のQRコードから読み取ってください)

TMSは外用後4時間以内に75%が頭皮から吸収されるため、少なくとも最初の4時間は洗髪を避ける必要があります。また、頭皮が湿っている状態よりもドライヤーで髪を乾かしてから外用することをお勧めします。男女ともに5%TMSを1日2回外用することが推奨されており、5%TMSの女性に対する有効性と安全性は証明されています。TMSにはプロピレングリコールが含まれているため、かぶれを起こす場合があります。もしかぶれを起こした場合は医師にご相談ください。開始後4~6週で一過性の脱毛が起こることがありますが一時的な現象です(むしろ良い兆候と考えてください)。効果が現れるまで約4カ月程度かかり、6~12カ月でピークに達し、使用を中止すれば4カ月程度でもとに戻ります。なおAGAおよびFAGAの治療において中止後も効果が永続するものは1つもありません。

使用方法

  1. 左右対称になるように頭頂部に髪の分け目を作り、分け目に沿ってTMSを塗布
  2. 中央部の分け目から右側(または左側)2cmの位置に新たに分け目を作り、分け目に沿ってTMSを塗布
  3. さらに外側へ2cmの位置に分け目を作ってTMSを塗布

上記の順序で頭皮を合計5分割してTMSを塗布することで頭頂部全体をカバーすることができます。

Key Points

①1日2回正しく外用することで高い効果が得られる

②頭皮を5分割して外用することで頭頂部全体をカバーできる

(文献1)Olsen EA et al. Summation and recommendations for the safe and effective use of topical and oral minoxidil. J Am Acad Dermatol. 2025;93:457-465.

ミノキシジル内服の有用性

ミノキシジルの外用は発毛剤の世界標準です。ほぼ全ての脱毛症に有用と考えられます。2017年の診療ガイドラインではミノキシジル外用は推奨度Aですが、内服は推奨度D(行うべきでない)となっています。外用と内服は推奨度が正反対です。その背景として、内服薬は海外でも認可されておらず、有効性と安全性が確立されていないことにありました。しかし、2021年の海外の総説論文では検証が不十分ではあるものの、ミノキシジル内服は忍容性のある効果的な治療法であると述べられています(文献1)。忍容性とは医薬品の副作用をどの程度まで許容できるかを示すものです。

ミノキシジル内服の主な副作用は、全身多毛、立ちくらみ、動悸、頭痛、顔面/下肢浮腫などです。近年の報告でミノキシジル内服の有効性と安全性が示され、投与中央値は男性2.6mg/day女性1.1mg/dayと報告されています(文献2)。別の論文では男性では1日1.25mg~5mg 女性では1日0.25mg~2.5mgが推奨されています(文献3)。男女差というよりも体重差によるところが大きいと考えられ、日本人に投与する場合はより少量にする必要があります。当院では長期安全性の観点から2.5mg錠をお勧めしています。ただし、心疾患がある人や70歳以上ではリスクが大きく、外用薬にとどめておく方が無難でしょう。なお、ミノキシジル内服薬には国内製は存在せず、海外製(国内未承認薬)のみとなるため医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。ご希望の方は同意書をダウンロードの上、必要事項を記載して持参ください。

Key Points

①ミノキシジル外用は有効性と安全性が確立されており、第一選択として推奨される

②ミノキシジル内服は強力な発毛効果があるが全身性の副作用に注意が必要である

(文献1)Randolph M, Tosti A. Oral minoxidil treatment for hair loss: A review of efficacy and safety. J Am Acad Dermatol. 2021;84:737-746.
(文献2)Vañó-Galván S et al. Safety of low-dose oral minoxidil for hair loss: A multicenter study of 1404 patients. J Am Acad Dermatol. 2021;84:1644-1651.
(文献3)Villani A et al. Review of oral minoxidil as treatment of hair disorders: in search of the perfect dose. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2021;35:1485-1492.

フィナステリドの有用性

AGAはジヒドロテストステロンの作用によって早期脱毛を起こすことが原因です。毛髪が失われるのではなく、ヘアサイクルが短くなり、細い毛の割合が増えるため薄毛に見えるのです。5-α還元酵素阻害薬であるフィナステリドはジヒドロテストステロンの産生を抑えることで効果を発揮します。

AGA治療では髪を太くすることが重要であり(文献1)、ミノキシジル外用が推奨されます。ただし、早期に脱毛が起きてしまうと意味がないので、フィナステリドで脱毛を抑えると良いのです。脱毛を防ぐことで結果として太い毛が育ち、毛量が出てきます。「ミノキシジル外用で髪を太くして、フィナステリドで脱毛予防する」というのが世界標準治療です。しかし年齢が若ければ髪が生えるポテンシャルがありますので、フィナステリド内服で脱毛を抑えるだけでも十分です。

フィナステリド内服中および内服中止後1ヶ月間は避妊が推奨されています。国内臨床試験のデータでは、性機能障害(性欲減退・勃起不全等)の発生率は2.9%と報告されています。また前立腺がん検査を受ける際は、フィナステリド内服中と担当医にお伝えください(PSA値が約50%低下します)。

フィナステリドは国内製と海外製がありますが、治療効果に差はありません。海外製は値段が安いのが利点ですが、国内未承認薬のため医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。AGA薬の海外製はインド製が主流です。インドはジェネリック大国であり、その品質は国際的にも一定の評価が得られています。ただし、偽物や粗悪品が流通していることもあり、インターネットを介した個人輸入は大変危険であると認識しておきましょう。

Key Points

①AGAの治療は髪の毛を増やすよりも太くすることの方が重要である

②フィナステリドは早期脱毛を抑えることでAGAを改善させる

(文献1)Ishino A et al. Contribution of hair density and hair diameter to the appearance and progression of androgenetic alopecia in Japanese men. Br J Dermatol. 2014;171:1052-9.

デュタステリドの有用性

男性型脱毛(AGA)治療で最も効果が高いのはどれか?それを調べる研究結果が2022年に発表されました。カナダ・トロント大学の研究者たちが臨床試験23件のデータから相対的な有効性を比較しました。治療開始24週間後の総毛髪数の検討で最も有効性が高いのは「デュタステリド0.5mg内服」と結論づけました(文献1)。フィナステリドの効果が不十分であればデュタステリドへの変更を検討してみてもよいでしょう。

AGAはジヒドロテストステロンの作用によって早期に脱毛が起きてしまうことが原因です。それを抑えるのが5-α還元酵素阻害薬です。5-α還元酵素にはⅠ型とⅡ型の2種類あり、フィナステリドはⅡ型のみ抑えるのに対し、デュタステリドはⅠ型とⅡ型の両方を抑えます。また、フィナステリドの半減期が4時間であるのに対して、デュタステリドの半減期は53~65時間もあります(添付文書データ参照)。半減期とは薬物の血中濃度が半分になる期間のことであり、デュタステリドは効果が長時間持続することを意味します。なお、インターネット上には半減期が3~5週間という情報がありますが、添付文書にも記載されているように「肝機能障害がある人」のデータです。副作用として肝機能障害、女性化乳房、性欲低下などがあります。デュタステリド内服中および内服中止後6ヶ月間は避妊が推奨されています。また前立腺がん検査を受ける際は、デュタステリド内服中と担当医にお伝えください(PSA値が約50%低下します)。

デュタステリドは国内製と海外製がありますが、治療効果に差はありません。海外製は値段が安いのが利点ですが、国内未承認薬ですので医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。AGA薬の海外製はインド製が主流です。インドはジェネリック大国であり、その品質は国際的にも一定の評価が得られています。ただし、偽物や粗悪品が流通していることもあり、インターネットを介した個人輸入は大変危険であると認識しておきましょう。

Key Points

①デュタステリドはAGAの治療薬の中で最も効果が高い

②デュタステリドはフィナステリドに比べると酵素活性が高く、血中濃度が長期間持続する。

(文献1)Gupta AK et al. Relative Efficacy of Minoxidil and the 5-α Reductase Inhibitors in Androgenetic Alopecia Treatment of Male Patients: A Network Meta-analysis. JAMA Dermatol. 2022;158:266-274.